阪急百貨店の驚く新展開「常識破る売り場」の正体 アウトドアとラグジュアリーのブランドが共存

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例えば、前述した「グリーンエイジ」と同様の文脈で、地方とつながって応援していくビジネスも立ち上げた。それは、岡山県真庭市とタッグを組んだ「グリーナブル」というプロジェクトで、自然共生にまつわるモノやコトを紹介していくコミュニティブランドを立ち上げたのだ。

2021年には、真庭市が観光文化の発信拠点として「グリーナブル ヒルゼン」という施設を立ち上げ、阪急阪神百貨店が商品の選定や開発をはじめ、ロゴやホームページの制作も含めたブランディングを手がけた。

百貨店が地域おこしにかかわる事例はほかにもあるが、ここまで具体的な施策に踏み込んだ事例はあまり耳にしたことがない。まさにこれも「コミュニケーションリテイラー」の役割のひとつなのだろうし、阪急阪神百貨店が手がける実験的な試みとして“らしさ”につながっていくのだと思う。

理念を踏まえ、時代に合わせて進化する

「いずれの活動も、小林一三が築いた理念を踏まえ、しっかりと受け継ぎながら、その時代時代に合わせて進化させていく。代々の経営トップがきっちり行ってきた成果であり、こうやって“ビジョンを連鎖させていくこと”が大事なのです」と山口さん。

年に2回、ビジョンを語る動画メッセージを全社員に配信し、アンケート調査を実施しているという。王道の手法ではあるが、山口さんが備えている本気の熱意は、おそらく映像を通して伝わっているに違いない。視聴者数は回を重ねるとともに上がっているし、アンケートで忌憚のない意見を寄せてくる社員もいるという。

「お客様のよりよい生活スタイル、今、見えている現象だけでなく、その先にある『なりたい自分、送りたい生活』を実現することが私たちの役割。これを追求し続けていくことが使命だと思っています」(山口さん)。阪急阪神百貨店の明るい未来をつくることができるのか。山口さんが担う役割は大きい。

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川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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