その後、彼女は教えたことをすぐ忘れるというハンディキャップを持ちながらも、高校へ無事に進学しました。高校進学後は美術大学に進み、「絵を描く」という才能を生かしながら人生を歩んでいます。
もうひとりは、岡田君という男の子です。中学2年生のとき学校成績がオール3ほどで、私が指導を始めたのですが、1年後の中学3年時にオール5へと劇的に成長しました。このような極端な例はめったにありませんが、結果として多様な教科でバランスよく成績を収めた例としてご紹介します。
彼は非常に素直で、言われたことをすぐに実行するという特徴がありました。私が言うとおりの方法で勉強をこなしていき、比較的短い期間で成績が5へと上がったのです。その要因は、効率的な勉強方法を知ったこともあったのですが、実は、別のところに大きな理由がありました。彼のよい点を見つけ、徹底して褒めていったことで、彼は変わっていったのです。
1問正解したら褒め、できなくてもしからずに教えて、理解できたら褒めていきます。そうするとそのうちに「自分はもしかしてできる人間かもしれない!」という錯覚に陥るのです。
初めは錯覚でも、それが継続していくと、成長意欲が出て、やがて本物の意欲になっていきます。もちろん指導者との信頼関係があることが前提ですが。彼の場合、中学生の段階では、まだこれといった得意分野や専門的な方向性は見えなかったため、複数の教科で満遍なく成績を高め、そして高校進学以降に将来の方向性を見つけていくことにしました。その後、彼は自らの方向性を見いだし、今はエンジニアとして頑張っています。
親に必要になる「決意」
さて、何でもバランスよくこなす子に育てたほうがいいのか、それとも何か専門的能力を持つ突出した子に育てていけばいいのか、という冒頭の話に戻ります。私は正直なところ、「どちらでもよい」と考えています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら