田園都市線住民は、「うつ病」が治りにくい?

産業医の大室正志医師に聞く「現代の病」(下)

前編はこちら

難しい、「治癒」と「復職可」の判断

塩野:今は本当に企業におけるメンタルヘルスの問題が大きくなっていますよね。うつ病などで本当に苦しんでいる人もいますが、経営側から見ると、その人が本当にメンタル不調なのか、ただの怠け者なのか、それとも職場に問題があるのかがわかりにくいという問題がある。そこを見極めるのはきわめて難しいと思うんですけど。

大室:きわめて難しいですね。でもその人がどういう病気かどうかを判断するのは、産業医ではなく、その人がかかっている病院の主治医の仕事なんです。産業医はその人がうちの会社で働けるかどうかをジャッジするのが仕事。

たとえばダルビッシュのような5億円もらってるピッチャーが肩を壊したとします。この人の「復職可」のラインは155キロの球を投げられることなんですよね。でも130キロまでしか投げられないと、医学的には「治癒」だとしても、職場的には「復職不可」になってしまう。こんな見解の相違で物言いがつく場合がありますね。

塩野:物差しの問題ですよね。

大室:そうなんですよ。いま精神科系の病気はアメリカの精神科学会のハンドブックに準拠して診断することが多いんですが、一定のチェック項目を満たしたら、もう、うつ病と診断できてしまう。昔は精神科医がその人の置かれた環境や、体の出すサインも含めて診断してたんですけど、基準が曖昧なので結局偉い先生の意見が採用されるというような……。

もちろん現在でも心の病状を客観的に測定するには限界がある。アメリカ人は曖昧さを嫌うので、もう一定の基準を満たしたらうつだということにしてしまった。我々の考え方は、「診断された以上うつとして扱いますが、その代わり働けるかどうかの物差しはまた別に持たせていただきます」というものです。

塩野:たしか医師がうつかどうか診断するときは、「この2週間、ずっと憂鬱ですか」「はい」というように、問診でチェックしていくんですよね。じゃあ、うつかどうかの判断材料は本人の申告しかないということなんですか?

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