田園都市線住民は、「うつ病」が治りにくい? 産業医の大室正志医師に聞く「現代の病」(下)

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塩野:そのほうが身を守るのに都合がいいからですか。

大室:そう。省エネモードにして生きたほうが傷つかないから。でも小さなベンチャー企業が大きくなっていく過程では、社長、役員、部長くらいまでみんな軽躁的になりますよ。夜中に部下に電話して「今、夢で超いいこと思いついた。ちょっとメモれ」って。普通に考えたら、これちょっと病名つくな、みたいな(笑)。

塩野:部下のほうも、「夜中に社長からこういう電話かかってくるんだよ」って、嬉しそうに言ってる。

大室:そう、だから部長あたりまで軽躁的と言えるかもしれない。ですよ。「躁」の「層」が厚い。

塩野:(笑)躁は躁を呼ぶ。それは強い会社ですね。

田園都市線の住宅地は、うつになると治りにくい

田園都市線で活躍する2000系車両(東急電鉄のホームページより)

大室:これは僕の個人的な見解ですけど、田園都市線の高級住宅地に住んでいるような、高学歴・高収入の幸せそうな男性が、いざうつ病になっちゃうと、ものすごく治りにくいんですよ。

塩野:そういう人は、自分のあるべき理想像ができあがってるんでしょうね。

大室:うつが少しよくなってくると、通勤訓練というものをしてもらうんです。まずは駅まで行って、駅前のサンマルクカフェで日経新聞かなんか読んで帰ってくるだけでいい。でも住宅街の朝の駅前って、みんな一斉に同じ方向にバーッて歩いて行くじゃないですか。その中で自分だけ電車に乗れないとなると、「俺はダメ人間」となっちゃう。これが下町の門前仲町とかに行くと、昼間っからカップ酒持ってグダグダしてる人だっていっぱいいる。そういうある種の多様性の中にいると、「俺もありかな?」みたいに思えるんだけど。

塩野:そうですね。地域コミュニティとしての寛容性の違いですね。

大室:でも理想の家族像が決まってると、そこからずれた瞬間、自分で自分を失格にしてしまう。しかもそういう夫婦は奥さんも理想の家族像を目指しているので、旦那さんが会社に行けなくなるとそれが崩れてしまう。いい奥さんを演じるために言葉では「いいのよ、ゆっくり休んで」って言うけど、頬のあたりが引きつってる。そういう言外のメッセージって旦那さんにも伝わってしまうものでしょう。

塩野:それは滅茶苦茶よくわかりますね。やっぱり多様性のある場所に住んだほうがいい。朝から飲み屋が開いてる某下町エリアでもいい(笑)。

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