50歳手前で「早期退職」に踏み切れた3つの理由 人生後半もうひと仕事できる人の思考・行動法

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最後にもう1つ、早期退職に踏み切れた理由と思うことに、仕事に対して偏見、ないしこだわりがないことがあるかもしれない、と感じています。

留年して資格の勉強をしていた時、学費と生活費を稼ぐためにアルバイトをしていたのですが、具体的には家庭教師と清掃の仕事をしていました。これは、なるべく時給換算した時に高い支払いを受けられる仕事と、時給は安くても毎日自宅の近くで時間を有効活用できる仕事を選んだ結果でした。初めての清掃の仕事は、当時住んでいたアパート近くの店の閉店後の掃除でしたが、年中無休で仕事があり、勉強しても効率の悪い深夜の時間に稼ぐことができたので、自分にとっては一石二鳥だったのです。

仕事を通じた経験は時給以上の価値があった

稼ぐという観点でも理にかなっていましたが、今振り返ると、仕事を通じた経験は、もらっていた時給以上の価値がありました。閉店近い時間のお客様の様子、閉店後一緒に働いた社員やアルバイトとの会話など、自分が知らなかった世界で、大変興味深いものでしたし、別な現場では当時まだ少なかった中国人留学生と一緒に働くことになり、これもよい経験でした。

今になって、こうした社会の基礎を支える人々が「エッセンシャルワーカー」と呼ばれ、その存在に少し陽が当たるようになりましたが、その仕事の世界をリアルに知っており、リアリティーをもって語れる人、言語化できる人は、多くないように思います。そして適度に体を動かしながら黙々とこなす清掃の仕事が、私の性に合っていたし、勉強やデスクワークのように頭を動かすことと組み合わせることで、とてもリフレッシュできました。

こうした経験があったので、早期退職後は、清掃のアルバイトなども含めていろいろな仕事を組み合わせて働けばいいし、それによって生活のリズムを作ったり、健康を維持したりすればいい、と思っていましたし、実際にそのとおりになっています。学生の頃には意識していませんでしたが、今は運動不足の解消につながるメリットも感じます。

そして、仕事や稼ぎの量を、アルバイト仕事の量の増減で調整することもできますから、独立して仕事が完全になくなる恐怖から自由になれる、有益な精神安定剤でもあります。ほかの仕事との兼ね合いで働き先も何度か変えていますが、私の仕事全体の組み立て方にあったシフトを認めてもらえる会社で、今でも清掃のアルバイトを続けています。

自分に見えていない世界を知る機会にもなり、社会の成り立ちをより深く知るという点でも大変興味深く、また、一緒に働く仕事仲間との会話も新鮮で楽しく、さまざまな人の人生を垣間見させてもらう機会にもなっています。

自分が早期退職できたのは、振り返ってみると、偶然に以下の3つの条件がそろったからでした。1)早いうちから早期退職する可能性を考え、社外でも通用する専門的なスキルや知識を身につけていたこと、2)社内や専門分野以外にもSNSを通じて幅広く人のつながりを得ていたこと、3)やる仕事についてこだわりや偏見にとらわれずにいられたこと。これから早期退職などで新たなステップを踏もうとしている方は、こうした条件を意識的にクリアしておくことをおすすめします。

川端 康夫 アクティブビジョン創業者

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かわばたやすお / Yasuo Kawabata

1992年電通に入社。長らく営業部門にて電器メーカーや通信系の企業、NGO/NPO等を担当。その後KDDIへ出向し、新規事業立ち上げやベンチャー投資・育成に関わる。2013年には英国のタクシーサービス企業Hailo(ヘイロー 現・myTaxi)へ、KDDIオープンイノベーションファンドからの投資を担当するとともに日本法人COOとして国内の事業を立上げた。KDDIにて5年間余り勤務した後に独立し、2017年にアクティブビジョンを設立。主な得意分野は、IT全般、ソーシャルメデイアマーケティング、社会起業家支援、通信業全般、ベンチャー投資・育成など。2015年より始めたランニングはフルマラソン・サブ5完走レベル、航空業界・旅行業界等の知見もある。

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