事態は日に日に大きく取り上げられるようになり、戻ってやる予定だった新しい事業はとても着手できるような状況ではなくなってしまいました。こうした中、早期退職の募集が始まり、当初は応募しないつもりでしたが、新規事業に着手できない状態の中、ギリギリになって応募することにしたのです。
会社の中で、自分のやることがないまま数カ月から数年を待機して過ごすことも選択肢としてあったかもしれません。在籍していれば、評価が悪かったとしても毎月一定の給料はもらえるわけですから。ただ、自分の場合は間もなく50歳になるという年齢の節目を迎え、この先残された人生の時間の中で自分がどれだけのことをやれるかと考えた時に、場合によっては数年という時間をじっと待つために使うことは考えられない、と思ったのです。
「早めに会社をやめる未来」考えるように
こうして早期退職に突然応募することになったわけですが、「早めに会社をやめる未来」については、実は30代の頃にある人と出会ったことをきっかけに、漠然とながらずっと考えていました。
その方は、私が30代半ばの頃に仕事で関係のあった NGO に入ってきた当時50歳の女性です。20〜30代がほとんどのその組織に50歳の人が入ってくるというのは大変珍しく思い、その理由を尋ねました。
彼女が答えてくれたのは、とても印象的なキャリアプランでした。「自分は外資系の企業で日本支社のトップになり、自分なりに目指すキャリアのゴールを達成したと思うけれど、自分は70歳まで働きたいと思っている。60歳に定年を迎える頃には年齢的に気力や体力が衰えることも考えておかなければならず、それから70歳までの10年では短いのではないかと考えた。そこで50歳からの20年あれば一仕事できるであろうと思って、転職してきた」というのです。
私自身も仕事は大好きですので、自分が働けるうちは働きたいとその頃から思っていました。しかし、会社を早めに辞めて次の仕事に移るという発想は、当時の私にはなかったので、この考え方、キャリアプランには大変魅力を感じました。そこで自分も50歳前後になったら今の仕事を辞めて別の仕事に移り、そこから70歳くらいまでもう一仕事することを、心に決めていたのです。妻にもその話をしていました。
早期退職後の具体的なプランはありませんでしたが、この会社を辞めたら自分は何をして食べていけばいいのだろう、とはことあるごとに考えていました。考えるうちに、自分に何か専門と言えるスキルや知識があることが、仕事を続けていくためのキーになるのでは、と思うようになっていきました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら