中村文則「僕は小説家だからこそ恐れずに言う」 安倍政権に疑念投げかける芥川賞作家の信条

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「でも本を出して読者に読んでもらう小説家である以上、やはり避けられない。僕が政治や社会に対してまったく興味がなければ、政治的なことを言う必要なんていっさいないんですけれど、そうではないから言います。作家とはそういうもの。1人称で主人公と一緒に考えたり世の中を見たり、必然的に個人に寄り添う。世界のブックフェスティバルにもいろいろ参加しますけれど、差別など感じたことがなく、ものすごく美しい時間が流れています。本や小説を読む人は、人を内側から見て、個人に寄り添う癖を持っている人が多いからとも感じます。社会的に発言できる立場にある人が思っていることを恐れて黙っているのは、読者に対して誠実ではない。だから僕は言うべきことを言うわけです」

インターネット言論は論理的じゃないものも多い

「批判の中身を見てみると、政治的なことも、歴史についても、こちらはかなり調べて書いていますから、論理的な指摘というより、ただただ政権を批判するなって、それしか言われていない。自分に自信がない時に強い国家と同化したいという彼らの気持ちはわかるんです。それは何も生まないけれど、そういう気持ちも無視しないように、今回の小説は書きました。自分たちの政権が駄目と思うのは恐いし、考えるのも面倒だから、大丈夫と思いたい心理が働く。大丈夫と思いたいから、問題が発生した時に国にではなく、個人に責任を転嫁する。この流れを断ちたい」

中村自身、大学を卒業してから25歳で新潮新人賞を受賞し作家デビューするまでの2年間は、言葉と思想がぐるぐると渦を巻く若者だったであろうフリーター時代がある。

「インターネット言論は論理的じゃないものも多い。小説にも書きましたが、発光する画面を見ている時、人間はどうやら前頭葉が抑制的になるらしいと。前頭葉が抑制されている時の言葉なので、そりゃネット議論は劣化しますよね。本音を言うと、もしSNSがなくなったら、確かに大きな恩恵は失いますがずいぶん世の中は良くなると思います」

デビュー以来18年。中村は専業作家としてすでに21冊の本を出版し、芥川賞、大江健三郎賞をはじめとする各賞を手にし、著作は15の言語に翻訳され、世界からも注目を浴びてきた。そして近未来の独裁政権を描いた『R帝国』の文庫版(中公文庫)も、5月の発売を待つ。ノワール作品への貢献を評価されてアメリカでデイビッド・グディス賞を受賞したほどの重厚な作品世界だけでなく、小説家としての中村の生き方に憧れて支持する読者も多い。

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