東村アキコが「お稲荷さん」を本気で描いた理由 「苦もなくできることは誰にでも絶対にある」
全年齢をターゲットにしたテーマ
――なぜこれまでとはまったく違う毛色の漫画を描くことに?
友人から「お稲荷さんに関わる本を出したい」と相談を受け、原作を見せてもらったのがきっかけです。「これを漫画にしたら面白い! 私には絶対に思いつかないし、その引き出しもない。この題材を他人にあげたらもったいない!」と思い、漫画化を進めることになりました。
例えば東京の街にはあちこちに「お稲荷さん」が祭られていますが、お稲荷さんは、子どもからお年寄りまで幅広い世代に興味を持たれます。全世代が興味を持つテーマはなかなかありません。例えば『東京タラレバ娘』は、おかげさまでテレビドラマ化されましたが、「結婚」や「婚活」がテーマの作品です。独身を中心としたアラサー・アラフォー世代のニーズは強いですが、子どもやお年寄りには響きにくい。
それにお稲荷さんをテーマにした漫画は人気ジャンルで先行作品はすでにたくさんあるものの、お参りの仕方を詳しくレクチャーしてくれる漫画はないと思っています。
漫画は、売れればたくさんお金が入ってくるし、売れなければお金は入ってこないので、ばくちみたいなところがあります。アートワークや芸術表現のように見られますが、スタッフを食べさせていくためにも、売れるものを創らないといけないので、やっぱり商売ですよね。
芸術的なものを何年かに1度描いて、それがすごく売れる先生ならいいですけど、私の場合はそうではないので、クリエイターというよりも商売人といったほうがしっくりきます。商売人気質で漫画家をやっているので、原作の考え方にピタッと合いました。
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