東村アキコが「お稲荷さん」を本気で描いた理由 「苦もなくできることは誰にでも絶対にある」

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――これまでの作品と比べて描くのは難しかった?

スピリチュアルっぽく見えないように描くのが大変でした。

ストーリー的に、「東村さん、いきなりスピリチュアル漫画を描きだして、どうした?」と思われるだろうな、と思いました(笑)。でも、神社はギリギリ、スピリチュアルではないと考えています。日本人は個々に宗派はあれど、皆さん初詣も行くし、子どものときに神社で遊んだ経験を持った人も少なくないでしょう。生活に根付いている神様であり、信仰だと思います。

私は霊感、信仰、願掛けなど、目には見えないスピリチュアルな分野にはまったく縁遠いタイプでした。神様の存在とか舐め腐っていて、初詣に行ってもおさい銭払わずに出店で何か食べて帰るような人間でした。

東村アキコ (ひがしむら・あきこ)/2007年に連載を開始した『ママはテンパリスト』(集英社)が100万部を超えるヒット。『海月姫』(講談社)で2010年講談社漫画賞受賞、 自身の半生を描いた『かくかくしかじか』(集英社)で第8回マンガ大賞、第19回文化庁メディア芸術祭漫画部門大賞をそれぞれ受賞。 2019年には『東京タラレバ娘』(講談社)で漫画界のアカデミー賞といわれるアメリカのアイズナー賞で最優秀アジア作品賞に選ばれる。『海月姫』『東京タラレバ娘』『偽装不倫』(文藝春秋)はいずれもテレビドラマ化。2020年4月から『美食探偵 明智五郎』(集英社)がテレビドラマ化される(撮影:今 祥雄)

でも原作を読んで、商売の神様であるお稲荷さんのお使いがキツネである理由は、お稲荷さんが稲を中心にした食物の神様でもあって、キツネはお米を食い散らかすネズミを追い払うからだとわかったときにスッキリしました。キャラクターとしてもキツネは好きだし、街角でお稲荷さんのキツネの像を見ると、すごくカッコよく見えます。こんなにも風情があるものを、今までは素通りしていたんだって思いました。

スピリチュアルな内容でも、漫画にすることでマイルドになります。「東村さんヤバイ方向行っちゃった??」と思われて仕事が減るなら、それはそれでいいや、とも思いました。これ以上仕事が増えて忙しくなるのもイヤなので(笑)。

自分で行動して入り込むことに意味がある

――この作品は、日本全国の稲荷神社の総本宮とも言われる、京都の伏見稲荷大社がモデルだと伺いました。

今は新型コロナウイルスの感染拡大で訪日旅行客が激減しているタイミングではありますが、世界最大の旅行コミュニティサイトであるトリップアドバイザーがまとめた「外国人に人気の日本の観光スポットランキング 2019」では伏見稲荷大社(京都府京都市)が6年連続で1位になりました。きっと海外の人も興味があるのでは、と思って外国語バージョンも検討中です。

――東村さんも実際に伏見稲荷大社の頂上でお参りされ、日常的にもお稲荷さんにお参りされているそうですね。

非科学的なようですが、実は不思議なことがたくさん起こるようになりました。偶然と言われたらそれまでですが、息子の茶道教室のお迎えで待ち合わせをする際、集合場所を設定していたわけではないのに、なんとなく細い道が目に入って「ここにいるはず」と思い車を進めていたら、突然お稲荷さんに遭遇したんです。まるでお稲荷さんに吸い込まれたかのようでした。そしたらその先に息子が「ドューン!」って立っていたんです。初めて通る場所でお稲荷さんだけでなく息子にも遭遇したことは、お参りの直後でもあったのでダブルでびっくりしました。

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