宋美玄が正面切って「女性の性」を語る理由

妻で母で医師だからこそ分断に立ち向かえる

丸の内の森レディースクリニックの宋美玄さん(筆者撮影)
ジャンルが何であれ、見た者が沈黙せざるを得ないほど非凡な輝きを放つ女たちがいる。「キラキラ才色兼備女子」や「スーパー両立母」のような、化粧をした女性観はもう要らない。水面下で必死に水掻きを続ける努力や、周囲が感嘆し呆れる集中力。一見華麗な女たちのバックストーリーを、河崎環が描き出す。

「私、言いたいことを言ってしまう性格なんですよね。目立たずに生きる方法がわからないだけ。でも性やからだの知識がなくて診察室で泣いている女性を助けたい、知識を広めたい。多分それが私の(表現の)エンジンなんだと思うんです」

東京・丸の内で開業する「丸の内の森レディースクリニック」の、診療時間の合間にかろうじて確保できたランチタイム。クリニック階下のフレンチレストランに現れ、関西弁のイントネーションを残して快活にしゃべる宋美玄(ソン・ミヒョン)は、その手元で普通なら猛烈に食べづらいはずのパイ料理を驚くほどきれいに平らげていた。頭の回転が早いだけじゃない、育ちの良い女性だ。

女性が性を率直に語る本を出すことに、怖さはなかった

2010年に上梓し、50万部のヒットとなった『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)の衝撃から8年。AV偏重の性知識で生きる男性や、自身の性を正視しかね持て余す女性に、等身大の女のセックスを説いた。率直、あけすけ、先進的、過激。世間が彼女に対してどんな一方的なイメージを持つにせよ、宋美玄は日本のいわゆる”女医”の中でも素直に”超学歴エリート”だ。

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1976年、神戸生まれ。消化器外科医の父と栄養士の母のもとに生まれた、在日コリアン3世である。在日コリアンコミュニティの英雄として崇拝される祖父は、神戸のケミカルシューズ製造販売で財を成した人物。日本語通名を名乗ることなく、中高を名門・神戸女学院で学び、大阪大学医学部へ進んだ。産婦人科研修医として複数の病院を経験、阪大病院へ戻った頃、その事件は起きた。

福島県立大野病院における、産科医逮捕事件。帝王切開手術を受けた産婦が死亡し、男性執刀医が業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕された(2008年に無罪確定)。困難ケースで起きた不幸な死が「母子ともに元気に生まれるのが当然」と信じる世間から「医療ミス」と非難され逮捕までされるという衝撃を受け、医者がどんどん辞めて産婦人科医不足に拍車がかかる。そんな当時の風潮に宋は危機感を感じ、現役産婦人科医の医療ブロガーとしてネット上で丁寧な発信を続けた。

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