中国・新型コロナ「遺伝子情報」封じ込めの衝撃 武漢「初動対応」の実態、1万3000字リポート

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それと時を同じくして、華南海鮮市場に隣接している湖北省新華医院の呼吸および重症医学科主任である張継は、12月26日、4人の原因不明の肺炎症例を診察した。張継は12月27日に4人の「原因不明のウイルス性肺炎」を病院に報告し、病院はそれを江漢区の疾病管理センターに報告した。

12月28日から29日に、新華医院はさらに3人の華南海鮮市場で発症した患者を収容したが、この3人もウイルス性肺炎と似た症状を持っていた。『武漢晩報』など後の報道によれば、12月29日の午後1時、新華医院の副院長である夏文広が10人の専門家たちを集めて、これら7つの症例を検討した。専門家たちは異常な状況であるとの考えで一致し、夏文広が直接、省と市の衛生健康委員会疾病予防管理所を訪れて報告を行った。

同日、報告を行った機関には、さらに武漢市中心医院の公共衛生科がある。当日午後、湖北省と武漢市の衛生健康委員会疾病予防管理所は、省と市、区の3つの疾病管理センターに対して通知を行い、新華医院と武漢市中心医院の後湖分院において、海鮮市場と関係のある原因不明の肺炎患者がたくさん収容されていることを知らせ、緊急に対応処置を取ることを要求した。

湖北省と武漢市の疾病管理センターは、江漢区や礄口区、東西湖区の疾病管理センターと共に疫学調査を開始した。武漢市金銀潭医院の業務副院長である黄朝林らが新華医院を訪れて6人の患者を引き取った。武漢市同済医院もすでに述べた市中心医院で最初の遺伝子配列を解析した患者を金銀潭医院へと転院させた。

12月30日、省・市・区の疾病管理センターは「病院から報告された華南海鮮市場での多数の肺炎症例の状況調査と処置報告」を作成した。同日、武漢市衛生健康委員会は内部に対して通知を行い、武漢市の多くの医療機関で原因不明の肺炎症例がたしかに続々と出現していることを知らせ、また華南海鮮市場と連携して、各医療機関に対してここ1週間の間に類似した特徴を持つ原因不明の肺炎患者を診察したかどうかを報告するよう要求した。

こうして、張継の粘り強い報告が武漢市衛生健康委員会を動かし、「原因不明の肺炎を治療するための緊急通知」が公布された。この通知がネット上で瞬く間に広まり、遺伝子配列の解析結果を見た李文亮ら医師たちのWeChatにおける警告と一緒になって、武漢を発端とするこの感染拡大の情報を外部の世界へと最初に伝えるものとなったのである。

武漢から上海へサンプルを送付

武漢市中心医院のもう1つの症例サンプルは同様に華南海鮮市場に隣接する後湖分院から送られてきており、患者はその1日前に入院し治療を開始していた。患者の名字は同じく陳であり、福建省泉州に籍を置く41歳の海鮮市場の個人経営者だ。12月20日に寒気を感じた後、40度の発熱、気怠さ、せきと痰、息切れなどの症状が出始めた。

12月26日に武漢市中心医院後湖分院に「発熱の原因検査と肺の感染」という名目で入院し、12月30日に気管支鏡によるサンプリングが行われ、気管洗浄液のサンプルを1つ多く残しマイナス80度の冷蔵庫に保存した。

「サンプルを1つ多く残したのは、われわれが復旦大学附属上海市公共衛生臨床センター(以下、上海公衛センター)、武漢市疾病管理センターなどと共同で国家の重要な科学技術プログラムである“中国主要自然伝染病ウイルス資源”というプロジェクトに取り組んでいるからだ。この協力関係はすでに5年間続いている。武漢市疾病管理センターは華中区域の臨床サンプルと環境検体の採集作業を担っており、それらを定期的に上海公衛センターへ送付し病原体の検査を行っている」。武漢中心医院呼吸内科の趙蘇はこう語る。

12月30日午後、サンプルが武漢市疾病管理センターの主任医師の手に渡った。1月2日、センターの別の研究員がサンプルをドライアイスとアルミの箱、発泡スチロールを使用して何重にも包み、その他の動物の標本と一緒に鉄道の運送システムを利用して上海へ送付した。1月3日、上海公衛センターの張永振教授のチームがサンプルを受け取った。

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