中国・新型コロナ「遺伝子情報」封じ込めの衝撃

武漢「初動対応」の実態、1万3000字リポート

このセンターは復旦大学に附属しているが、張教授自身は中国疾病管理センター感染病予防管理所の研究員であり、復旦大学生物医学研究院および上海公衛センターの教授も兼職している。さらにここ数年は人獣共通感染症や中国主要自然伝染病ウイルス資源の調査等の研究業務にも従事している。

1月5日早朝、張永振教授の研究チームはサンプルの中から新型コロナウイルスを検出し、さらにハイスループットシーケンサー(訳注:高速の次世代DNAシーケンサー)を通じて当該ウイルスの全遺伝子配列を入手した。その後シーケンサーのデータが表した系統樹(訳注:遺伝子の共通祖先までさかのぼった分岐図)に照らし合わせ、武漢の新型コロナウイルスが歴史上確認されたことがないものであると実証された。

上海公衛センターは当日すぐさま上海市衛生健康委員会や国家衛生健康委員会等の主管部門に報告を行った。同時に新型ウイルスとSARSは発生源が同じであり、すでに呼吸器からの感染を起こしている可能性があることを伝え、公共施設での適切な防疫措置を行うよう進言した。1月6日、中国疾病センター内部で二級緊急対応が開始された。

上海公衛センターの研究員は財新記者にこう話す。「われわれは通常の研究を行っている際に偶然ウイルスを発見し、事の重大さからすぐさま上への報告を行った」

3つのサンプルで新型コロナウイルスを確認

財新の取材班は広州のビジョンメディカルズと北京博奥医学検験所がほぼ同時に、さらにいくつかの遺伝子シーケンス企業が武漢の医院から原因不明の肺炎の症例サンプルを入手しているのを確認した。この中には、12月26日に武漢の現地の医院から遺伝子シーケンスを委託された「業界を牽引する一流機関」であるBGI(深圳証券取引所に上場するゲノム解析の大手)も含まれている。

12月29日、BGIが当該症例のサンプルに対して行った遺伝子シーケンス検査の結果によると、ウイルスとSARSの遺伝子配列の類似度は80%に達している。しかしSARSではなく、これまで確認されたことのないコロナウイルスであることがわかった。BGIはさらにSARS検査キットを使用し検査を行ったが陰性との結果が出て再度SARSであることが否定された。

BGIの関係者は財新の取材に対し、彼らが12月末に原因不明のウイルス性肺炎の患者のサンプルに対しシーケンス検査を行ったときは、このウイルスが臨床上すでに多くの人に感染していたこと、さらにすでに家庭での集団感染が起こっていたことは知らなかったと話している。

「われわれは遺伝子シーケンス検査を行う会社であり、毎日多くの検査委託を受けている。それゆえ大量のウイルスに接しているので新種のウイルスを発見することも多い。コロナウイルスは種類が多いが、これまでSARSを含めても人と関係があったコロナウイルスは6つのみで、その中でも人への感染力が強いものはSARSとMERS(中東呼吸器症候群)だけだった。また、当時はわれわれもこのウイルスが"良性"なのか"悪性"なのかまったくわからなかった」

BGIと武漢の現地の医院は長年の協力関係を持っており、財新の調査によれば、武漢の医院は2019年12月に少なくとも30を超える感染の疑いのある肺炎患者のサンプルをBGIに送付し、シーケンス検査の委託をしている。研究所はその中から全部で3つのサンプルが新型コロナウイルスに感染し肺炎を引き起こしていることを確認した。

12月26日の1例のほか、残りの2つのサンプルは12月29日と30日にそれぞれ入手している。彼らはこれら3つのSARSに分類されるコロナウイルスを混合し、ウイルス遺伝子配列を合わせて混合ウイルス遺伝子配列を作った。1月1日、3つのサンプルの検査結果が武漢市衛生健康委員会に報告される。1月3日、BGIが3つのサンプル中のウイルスに対し高深度の全遺伝子配列シーケンス検査を実施した。

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