苦節15年、「シワ改善コスメ」開発の舞台裏 ポーラの女性研究者が挑んだ研究の日々

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実はこの15年間、末延が携わっていたのは「リンクルショット」だけではない。2009年に「リンクルショット」の申請をしに行った帰り道、末延は真っ白な表紙の手帳を買った。「これからは美白だ!」末延たちは新規の美白有効成分の開発をスタートさせた。

ところが、美白の新規有効成分にも白斑事件の影が押し寄せる。末延は安全性を検証するために、開発途中の製品に関する研究会を行った。開発途中の医薬部外品で研究会を行うのは珍しいことだという。

末延たちは132人に1年間の連用試験を行い、皮膚科の先生たちにも1枚1枚写真もみてもらった。絶対に何かが起きてはいけない。安全性が確証できるエビデンスを得て、化粧品市場においては10年ぶりに新規の美白の有効成分として認められた。

次は宇宙向けの化粧品を開発

さらにポーラ・オルビスHD傘下のオルビスからは日本で初めて、肌への機能がある特定保健用食品(トクホ)を今年1月から発売している。この肌トクホも、リンクルショットや新規の美白有効成分と同時に開発されたものだ。末延は、「3冠を取ることができてすごくほっとしている。本当にメンバーに感謝している」と口にする。

末延則子(すえのぶ のりこ)/ポーラ化成工業取締役執行役員、ポーラ・オルビスホールディングス グループ研究・薬事センター担当執行役員。1966年兵庫県生まれ。1991年にポーラ化成工業に入社後、肌科学研究部長などを経て現職(撮影:尾形文繁)

そんな末延が次に目指しているのは宇宙だ。現在ポーラ・オルビスHDでは宇宙ビジネスアイディアコンテスト「S-Booster2018(エスブースター2018)」に参加している。

200件の応募の中から、ポーラ・オルビスからは肌データと衛生データを組み合わせた「美肌衛生予報」と、宇宙の中で快適にすごすための肌環境の研究の2つが最終候補に残った。

末延はポーラ・オルビスHDの研究統括組織であるマルチプルインテリジェンスリサーチセンターの所長としてこのプロジェクトにも参加している。

「宇宙って一見化粧品と関係なさそうだけれど、つないでみたらどんな新しいことができるのか。遠いところから接点を見つけてみたいと思った」

さまざまな化粧品を生み出す中で、末延が一貫して大切にしているのが消費者のインサイトの発見だ。「あぁこういう商品ほしかったのよね、って言ってもらえる化粧品を生み出していきたい。そういう商品を生み出すことで、人と人のつながりも生まれてくる。リンクルショットはそういうことも教えてくれた」。

日本初から宇宙の化粧品へ――。末延の挑戦はまだまだ続く。

若泉 もえな 東洋経済 記者

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わかいずみ もえな / Moena Wakaizumi

東京都出身。2017年に東洋経済新報社に入社。化粧品や日用品、小売り担当などを経て、現在は東洋経済オンライン編集部。大学在学中に台湾に留学、中華エンタメを見るのが趣味。kpopも好き。

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