苦節15年、「シワ改善コスメ」開発の舞台裏 ポーラの女性研究者が挑んだ研究の日々

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何回か話合いを重ねるうち、あるメンバーがこんなことを話し始めた。「アンチエイジングについてずっと研究していたけれど、いざ満足のいく商品を世の中に出そうとすると『シワが改善する』とは言えない。すごくもどかしい」。

実際にシワに関するマーケットを調べてみると、30代以上の人の70%がシワで悩んでいることに気がついた。末延たちはそこに勝機を見いだし、開発をスタートさせた。

末延たちがまず始めたのが、なぜシワができるのか、という原因を究明することだ。スライドガラスにシワのある皮膚とシワのない皮膚の一部を載せ、さまざまな抗体をかけて比較を行った。

地道に作業を重ねるうちに、スライドガラスの数は1000枚以上にも及んだ。当時シワに関する論文はたくさん出ていたが、「膨大にあるので何を信じていいかわからなかった。何が起こっているのか自分たちで調べないと確信が持てなかった」という。

批判の声も聞こえてきた

末延たちは1年半から2年近くスライドガラスとにらめっこし、ついに好中球(白血球の一種)が「エラスターゼ」と呼ばれる成分を過剰に放出することでシワが発生しているという原因を突きとめることができた。

だが今度は、その動きを抑制する成分を探し出さないといけない。植物エキスや食品添加物など約5400種類にも及ぶ成分を、ひたすら試していった。そこからようやく4つのアミノ酸誘導体から成る「ニールワン」と呼ばれる成分に行きついた。

末延さんは、ママさん研究者でもある。リンクルショット開発中に娘が誕生した(撮影:尾形文繁)

だが「ニールワン」は非常に不安定。通常医薬部外品の有効成分は3年間規定の量に保つ必要があるが、ニールワンにはそれが出来なかった。

リンクルショット開発に携わったメンバーは当初は5人だったが、この時20人くらいまでに膨れ上がっていた。

「世の中に出るかわからないのに、なぜ医薬部外品のシワ改善にこだわるのか。もっと短期的にできる化粧品開発のほうがよいのではないか」。メンバーの中から批判の声も聞こえてきた。

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