中国人女性が「高級コスメ」を買いまくる必然 訪日中国人の化粧品購入率はダントツだ
訪日外国人の消費支出の目玉は、化粧品である。インバウンド消費の売上高は為替レートに影響されやすいにもかかわらず、化粧品の売上高は堅調に推移している。日本百貨店協会の発表によると、2017年の化粧品免税売上高は2016年に比べ、17.1%増と顕著な増加である。
訪日中国人はこの数字に大きく貢献しているだろう。最新データの、観光庁「訪日外国人消費動向調査平成29年10月~12月期」によると、訪日中国人の「化粧品・香水」の購入率は81.4%であり、全体の46.1%に比べダントツに高い。つまり、日本で化粧品を買うことが定番化しているといえる。特に、訪日中国人の主力である20代、30代の若い女性が、日本では高級化粧品を買いまくっている。
筆者が若い中国人女性が百貨店で展開されるような高級化粧品を買うことに「違和感」を持ち始めたのは、4年前インバウンド研究を始めた頃だった。知り合いの紹介で、上海出身の訪日中国人女性2人の百貨店での買い物に同行した。
資生堂の高級ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」のカウンターに座ってから20分もしないうちに、おのおのが6000円の口紅、8000円のフェースカラー、1万2000円程度のファンデーション、2万5000円程度のスキンケアセット、そして1万円のフェイスマスクを数個ずつパパっと買っていた。
隣の席に座っていたのは、上品な中高年層の日本人女性で、彼女らに「お母さんへのプレゼントですか」と聞いた。「いいえ、私の母は使わないですし、すべて自分用です」とさらりと返答。当時、「爆買い」はまだ浸透しておらず、転売目的としての大量購入もあまりなかったので、自分のために高級化粧品を買いまくる若い中国人女性は、きっと店員と日本人女性を驚かせたことだろう。
日本の百貨店にある化粧品売り場を通ったことがある方であれば、きっとこういう違和感があるであろう。日本では、中高年層向けであるはずの高級化粧品があるカウンターには、いつも若い中国人女性がいる。たとえば、クレ・ド・ポー ボーテの6万円のクリーム、POLA(ポーラ)「B.A」シリーズの1万円前後のサプリメントや8万円のセット、あるいはアルビオンの2万円のファンデーション……。今の20代、30代の日本人女性には、なかなか手が届かない商品が若い訪日中国人女性のポーチの中や自宅の化粧台に普通にある。
なぜ、若い女性のうちからこのようなおカネの使い方ができるのか。高級化粧品を買いまくる理由について探ってみよう。
一人っ子政策の最大「受益者」は誰?
1979年から始まった中国の一人っ子(主に都市戸籍の家庭では1組夫婦に1人の子ども)政策には、さまざまな社会影響があった。人口抑制の効果がある一方、中国の高齢化、労働人口の減少など負の影響もあった。ただ、その中で、「受益者」がいたことも忘れてはならない。それは、のちに訪日中国人の主役になった都市部で生まれた女の子たちである。
中国は農耕社会の歴史が長く、「重男軽女(男性重んじ、女性を軽蔑する)」思想が強かった。特に農業をする農村地域では、男の子であれば大事に育てるが、女の子はいずれ嫁ぐと考えるので男の子ほど大切に育ててこなかったといわれている。
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