チョコを作るのは誰?ガーナのカカオ産地で「児童労働ゼロ」を目指す──学生が始めたNGOの17年間、ACE共同創業者の白木朋子氏に聞く

──児童労働とはどのようなものでしょうか。
15歳未満(開発途上国では14歳未満)、端的に言えば義務教育を受けるべき年齢の子どもは、大人と同じように労働に従事すること自体が国際条約(ILO第138号条約)で禁じられています。また、18歳未満の子どもは「危険有害業務」に従事してはならないと定められています。例えば、高所作業や海を深く潜って漁業をすること、有害な薬品を使うことなどが危険有害業務にあたり、具体的には各国ごとに労働法で規定されています。
──約1億3800万人という数字をどうご覧になりましたか。
世界の子どもの13人に1人が児童労働を余儀なくされているということを意味します。児童労働人口のうちの3分の2近くがサハラ以南のアフリカ諸国にいて、この地域では子どもの5人に1人が児童労働をしているという深刻な状況です。
児童労働をなくすうえで、2025年は重要な年であると言われてきました。というのは、各国が2015年に合意した「持続可能な開発目標」(SDGs=Sustainable Development Goals)では、環境や人権などさまざまな分野で2030年に達成すべき目標が定められている中で、児童労働については「2025年までに世界中のあらゆる児童労働を終わらせる」とされているためです。
児童労働人口は前回調査の2020年から2024年にかけて2000万人以上も減少しましたが、目標年である2025年の今もなお1億人を超える子どもが児童労働を余儀なくされている現状については重く受け止めなければならないと思います。
カカオ農家の5割以上で児童労働
──ACEは西アフリカのガーナで長年にわたって児童労働をなくすための活動に取り組んできました。ガーナの児童労働の現状についてご説明ください。
ACEは1997年に私を含む5人の学生でスタートしました。「児童労働に反対するグローバルマーチ」という国際的なムーブメントに日本から参加するためでした。当初は期間限定での活動でしたが、その後、活動の継続が決まり、ガーナでは2008年の現地調査をきっかけに活動を続けてきました。
ガーナおよび隣国のコートジボワールは、チョコレートの原料であるカカオ豆の主生産地で、世界の生産量の7割を両国が占めています。日本もカカオ豆の7割をガーナから輸入しています。
アメリカ・シカゴ大学の研究所による2020年の調査報告書によれば、両国では156万人が児童労働を強いられており、ガーナのカカオ農家の55%で児童労働が存在しているとされています。また、カカオ生産に従事している子どもの90%以上が危険有害業務に従事しているともいいます。農薬の散布であるとか、刃渡りの大きなナタを使って殻の硬いカカオの実を割るといった作業を幼い子どもたちがやっているのです。時には子どもの人身売買も起きています。
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