日本人が忘れてしまったサメとの深い関係

かつて築地市場にはサメがあふれていた

木本:まさかサメの肝臓がなかったら零戦が飛ばなかったとは。敵はサメみたいな飛行機を造ってましたけどね。ほかに軍需品になったものはありますか。

沼口:牛革が不足していたのでサメ革で軍靴を作ったそうです。

木本:シンプルにサメ革で靴を作ったと。

ザラザラの鮫皮(撮影:尾形文繁)

沼口:今日持ってきたのはウバザメの皮の標本ですが、薬品をかけると牛革のような弾力ある鞣し革になります。

木本:固くてしっかりしてます。乾いているせいもありますが、しっかりしていますね。あれ、これも革ですか?

さまざまな用途に利用された鮫皮

沼口:このザラザラの鮫皮は浮世絵師が刷毛(はけ)を筆下ろしするときに使ったそうです。

沼口麻子(ぬまぐち あさこ)/1980年、東京都生まれ。東海大学海洋学部卒業後、同大学院海洋学研究科水産学専攻修士課程修了。IT企業のプログラマーとして8年間の会社員生活を送ったのち、世界で唯一のサメジャーナリストとして独立。静岡県焼津市をベースに、サメの情報を発信し続けている。専門学校の講師、雑誌連載、ブログなどで「隠れサメ好き」の発掘に余念がない。今年5月『ほぼ命がけサメ図鑑』を上梓(撮影:尾形文繁)

カスザメという平たい形の革を使って、刷毛をザザッとすいて柔らかくして、染料を版木に塗りやすくする。江戸時代にはそういう用途にも使われていました。

木本:昔のサンドペーパーはサメ皮だった。お寿司屋さんでわさびをおろす「鮫皮おろし」もそうですよね。

沼口:コロザメの皮が使われています。木の板に貼っておろすとちょうどいいあんばいにおろせるんです。

木本:もちろん食用としても重宝されていた。

沼口:フカヒレは有名ですが、サメの肉はいまでもローカルフードとして各地で食べられています。おいしくてコンスタントに獲れるポピュラーなのが2種類います。ひとつはネズミザメです。流通名はモウカやモロ。どのようなサメかというと、ホホジロザメに似ていて、サイズが少し小さいものです。もうひとつがアブラツノザメ。青森より北の海で漁獲されることが多いです。

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