日本人が忘れてしまったサメとの深い関係

かつて築地市場にはサメがあふれていた

切り取った尾ビレを前に家族や仲間と思い出の1枚(写真提供:川田晃一)

沼口:築地でご商売をやっていた方にインタビューしたことがあります。昭和30年代には一面サメが水揚げされていた記憶があると。マグロやほかの魚も揚がっているはずなんですが、サメだらけの区域が一部あったのは間違いなさそうです。その方からホホジロザメのあごの標本をお借りしました。

木本:それだけシェアを持っていたと。

沼口:なぜサメが揚がっていたかを文献で調べると、中国にフカヒレを輸出する商売のためらしいです。ヒレを取って余ったお肉はかまぼこにした。昔の場外市場は全部かまぼこ屋さんだったそうです。小さい船しか着岸できなかったのが、工事をして大きい船がつけるようになった。その結果マグロが多く水揚げされ、お金になるので現在の隆盛に至ったようです。

木本:その前にお金になったのがサメだった。サメを食べる文化が廃れてしまうのは悲しいですね。

サメの卵の意外な活用法とは?

沼口:昔はかまぼこだけでなく、ナヌカザメや、ネコザメの卵を鶏卵に混ぜて伊達巻にしていたそうです。自分でも挑戦してみたんですが、100%サメだと味がややしつこくなるので1:1で混ぜてやると、伊達巻本来のしっとりとしたものができました。とてもおいしかったです。サメの卵には白身がないので、濃厚な感じに仕上がるんです。

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木本:どこで仕入れたんですか。

沼口:田向商店さんからアブラツノザメの卵を購入しました。でも流通することは少ないです。

木本:なるほど、簡単に手に入らない貴重な卵焼きですね。

沼口:卵の使い方にさらにユニークなものがあります。うなぎの稚魚のエサにアブラツノザメの卵を使うと発育がいいそうです。でもサメの卵は養殖魚の餌料としては高価で入手困難ですから、養殖には使うことには適していないそうです。それが解決できれば、ウナギの養殖も変わるかもしれませんね。

木本:知らない歴史、知らない食べ方、参考になりました。神茂の「はんぺん」を買って帰ります。

(構成:高杉公秀)

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