大起水産は、関西中心に回転寿司、水産物小売店を幅広く展開する魚屋さんです。お昼時になるといつも、大起水産のお店の前に行列ができるのを見て、不思議に思うことがありました。こちらの寿司の価格帯は、100円から500円まで。銀座や北新地の高級寿司店に比べたらもちろん安いですが、一方で百円寿司のお店よりは高めの価格設定です。
「人気の理由ですか。それは、お客様が“少し高いけど美味しい”と思ってくださるからだと思います」と同社創業者の佐伯保信会長。そう言われても、百円寿司専門(!)の筆者には、お言葉がすんなりとは腑に落ちません。でも、会長の若い時からのご苦労をお聞きするうち、徐々に、並んででも大起水産のお寿司を食べたくなって来るから不思議です。
魚を触れない魚屋さん
佐伯会長は愛媛出身。生まれは、満州奉天(現瀋陽市)だそうです。大阪に出て来たのは15歳の時。「商人の町」で自分を磨きたいと、堺で青果店を営む叔父のところで働かせてもらうことにしました。ただそこでバナナの入荷を待っていると夕方の5時過ぎになり、夜間の学校に行けません。学校で魚屋に勤めている友人がいて、話を聞くと、朝は早いが夜はしっかり学校に行けるとのこと。それで魚屋に転職しました。そこまではいいのですが、実は、佐伯さん、魚が苦手でした。
「魚を触れません。でも担当が塩干(えんかん=魚介類を塩漬けにして干したもの)だったので、助かりました。当時は配送が今ほど発達していなかったので、塩干物が多かったのです。ちりめんじゃこを売っていました」
今や鮮魚で名を馳せる佐伯会長、なんとスタートは塩干物、それもちりめんじゃこでした。
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