大起水産の回転寿司、「高くても行列」の裏側 「ちょっと高いけど美味しい」には魅力がある

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「魚の切り身やブロックではなく、一本丸ごと買います。そこからお寿司になるものもあれば、小売店『街のみなと』で売るもの、海鮮レストラン『天下の台所』で出すものもあります。事業全体で採算が合うように考えています」

こうした多角的な運営のおかげで、お客は解体したばかりの新鮮なまぐろを食べられるのです。今年6月にオープンした大阪天王寺のあべのキューズモール店では、この感動を少しでも多くの人に伝えたいと、毎日3度、11時、13時、17時にまぐろの解体ショーを開催しています。1回でも大変なのに3回もやるとは、なんとも思い切った挑戦です。

佐伯会長はまた、この解体ショーを軸にさまざまなイベントも企画しています。

「どういう魚をどう食べていただくか、魚屋が『実感劇場』を作って行く時代だと思っています」

ロシアや中国の領事館でも実演

有名なのが、1994年関西国際空港開港時、日航機の初荷が大起水産のまぐろだったこと。産地から直送する新鮮なまぐろをアピールするため『空飛ぶまぐろ』と銘打ってキャンペーンを実施し、大きな話題になりました。この関空を舞台にしたショーは、形を変えてその後も継続。昨年8月には、国際線到着エリアで、生・本まぐろの解体ショーを1週間開催しました。外国人観光客を前にスタッフが包丁さばきを披露し、累計で約2万人にさばきたてのまぐろを提供。思わぬイベントに、来日した観光客は大いに喜んだと言います。

外国人向けとしては、ロシアや中国の領事館にも招待され、まぐろ解体ショーを出張して実演しています。ロシア連邦在大阪総領事館(大阪府豊中市)でのイベントの時は筆者も取材に行きましたが、まぐろの登場に会場から大きな嘆声が上がり、さばかれたまぐろの振る舞いには長蛇の列ができました。あまりに列が長かったので取材後食べずに帰りましたが、今振り返れば残念なことをしたと後悔しています。このほか海外では、シンガポール、スペインなどでも解体ショーを開催して、日本のお寿司の美味しさを世界に発信し続けています。

生・本まぐろの解体ショーには人だかりができる(筆者撮影)

国内では年に一度の大きなイベントとして、エディオンアリーナ大阪(大阪府立体育館)での食の祭典『天下の台所 大阪まつり』を開催しています。12月中旬の2日間、同社を中心に47社が参加。生・本まぐろの解体ショーが行われている横では、生ズワイガニ、塩数の子、塩紅鮭、オーロラサーモン等の海産物、さらには正月食材、お酒、青果物などがずらりと並びます。お値打ち価格で提供されるので毎年盛況。昨年は2日間で約2万人が訪れました(入場無料)。

またわが国では古来、神社におコメと海の幸を供える慣わしがありますが、大起水産ではコメと魚に因んで、伏見稲荷大社、大阪天満宮などでまぐろ解体ショーを開催しています(来年1月には住吉大社でも実施予定)。大阪天満宮では、1皿5貫(トロ2貫、中トロ2貫、赤身1貫)を5百円の特別価格で提供、参拝者に人気の催しとなっています。

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