大起水産の回転寿司、「高くても行列」の裏側 「ちょっと高いけど美味しい」には魅力がある

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大起水産は、まぐろにこだわっている(写真:大起水産)

大起水産のお寿司には、現在、100円、150円、200円、250円、350円、500円の6種類の値段がついています。100円の甘えび、げそ、いなりから、500円の本まぐろトロ、うに、特大煮あなごまで、豊富なラインナップが並びます。

「やはり大衆魚と高級魚では、どうしても値段が変わります。でも、一番高くてもワンコイン、500円を限度にしています。お客さんが料理をしなくても、新鮮でおいしいものを家庭で作る値段と変わらずに食べられること。それを第一に考えています。寿司屋と魚屋の併設でコストを下げ、寿司をリーズナブルな価格で提供しています。自分が食べたい美味しいものを安く食べてもらうのが私たちの使命です」と佐伯会長。

会長が最初に取り扱ったちりめんじゃこの値付けの話も思い出されます。安い、中ほど、高い。適正な値付けであれば、各々の価格に応じたニーズがあるのです。お魚への豊富な知識と顧客のお財布事情を勘案したうえでのギリギリの価格が500円なのです。寿司好きのお客はそこらの事情を感じ取り、500円出しても高いと思わず列に並ぶのだと思います。ちなみに客単価は1650円前後とのこと。皆さん、安いものから高いものまでバランスよく食べているのがわかります。

京都タワーにも店舗をオープン

大起水産は2017年4月、新装なった京都タワーのB1階、1階、2階にお店をオープンしました。B1階は回転寿司、1階はお持ち帰りのお店です。リニューアルオープン時は、1階でマグロの解体ショーをして盛り上げ、解体したまぐろはそのままB1の回転寿司で提供されました。

面白いのは2階の体験フロアです。焼き物の絵付けや和菓子作りなどさまざまなお店がありますが、大起水産では、珍しいお寿司の握り体験ができます。2000円から申し込めますが、数に限りがあり、現在のところ赤字だそうです。

「B1はようやく黒字になりましたが、2階はまだまだです。でも、日本を代表する観光地の京都で、握り寿司を出すことに意味があると思います。インバウンドの方にも喜んで頂いています」

日本人の平均寿命の高さは世界が注目するところですが、長寿の理由のひとつにお魚料理を好むことが挙げられています。魚料理の代表のお寿司を、日本のシンボル京都で握って食べてもらう。今や世界で評判のニギリズシを、京都からさらに発信していこう、という試みなのです。

なお当初は赤字でも、京都タワーホテルや10階のビアガーデン、近隣のデパートなどへ、お魚・お寿司を提供していくことで、トータルで採算が取れるようにしていきたいとのこと。さすが佐伯会長、日本の食文化への貢献と共に採算性への目配りも怠りません。「商売するさかなクン」は今後も、“鮮度がごちそう”の理念を追求しつつ時代の流れを泳いでいかれることでしょう。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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