「ひと口に漁港と言っても、日本の魚は焼津港、韓国の魚は清水港に主に陸揚げされます。西の海は魚礁に魚が集まりますが、南の海は回遊魚でまぐろなど大きな魚が獲れます。魚にも高級とそうでないものがあり、高級なものは、白身、赤身となります。白身はタイ、ヒラメなど、赤身はまぐろです」
佐伯会長のお話は、日本の漁港、魚の種類など漁業全般にわたり、尽きることがありません。
「まぐろは、赤道直下で産卵し、北へ回遊すれば虫がいない本まぐろとなります。乱獲に加え中国での人気の高まりから、まぐろの値段も高騰しています。それで、まぐろの稚魚を養殖する『蓄養』に注目が集まりますが、これも稚魚の乱獲だ、と批判されつつあります(筆者注:こうした批判を受けて、近畿大学が永年研究したクロマグロの『完全養殖』が話題を呼んだわけです。佐伯会長も研究当初、協力を惜しまなかったとのこと)」
こうした含蓄深いお話を聞いていて、佐伯会長は、タレントの「さかなクン」並みの愛情を魚にお持ちだな、ということを改めて感じました。ただあちらは純粋に学問的興味ですが、佐伯会長のそれは商売のための実践的知識、実学だと思います。
その「商売するさかなクン」がこだわるのが、今や同社の専売特許とも言える「まぐろの解体ショー」です。
なぜ、まぐろの解体ショーにこだわるのか?
「まぐろは、血の魚とも言われ、足が早い魚です。どうしても生臭い。それでマイナス50度で冷凍したものを解凍し、直ぐにさばいて食べるのが臭みもなく美味しいのです。それを味わっていただきたいと、マグロの解体ショーを始めました」
しかし、まぐろを丸ごと1本解体して採算は合うのでしょうか? そんな筆者の疑問に、会長はこう答えてくれました。
「採算は正直、合いません。でも、大きなまぐろの登場を迎える会場の雰囲気、職人が目の前でさばく力強さ、そしてそれをそのまま口にした時の新鮮な味わい。五感全部でおいしさを味わって頂けます。その感動を皆様に伝えたいのです」
ただ採算度外視となると、なかなか維持するのが大変です。同業者で解体ショーをしていたところも早々に撤退していると言います。その中で、大起水産だけが続けられているのは、魚屋と寿司屋を両方経営していることの強みによります。
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