逆境でもヤクルト選手が戦意喪失しない理由 元メジャーリーガーが与えた予想外の好影響
――プロ18年目の畠山選手がもっとも影響を受けている? プロでは畠山選手の方が先輩ですけど、学年で言えば青木選手の方が1年上ですね。
小川:初めに言っておきたいのは、きっとファンのみなさんの認識の中では「畠山はあまり熱心に練習しない」というイメージを持っていると思うんです(笑)。でも、彼は彼なりにいろいろなことを考えながら練習をしているんです。今年、足の調子が万全ではなかったので、首脳陣の中には「二軍キャンプでじっくりと調整した方がいい」という意見もありました。でも、そこは僕が「一軍に連れていく」と押し切りました。ここでダメだったら、ハッキリと「二軍に行け」と言うつもりだったんです。でも、結果的に青木が加わったことで、畠山にはいい刺激となったんです。
――畠山選手に、どんな変化が生まれたのですか?
小川:メジャーリーグも経験している青木は、トレーニングに関して、さまざまな引出しを持っています。その姿を見て刺激を受けたのでしょう。この春のキャンプで、畠山はそれまでやろうとしなかったウエイトトレーニングを始めたり、青木にいろいろなアドバイスをもらったりしているんです。ウォーミングアップの前に、早くやってきてひと汗流している姿もありました。今までなら考えられないことです。これこそ「青木効果」だと、僕は思っています。
――昨年まで監督を務めていた真中満さんは、「今のヤクルトにはチームリーダーがいない」と話していました。青木選手のリーダーシップはどのように見ていますか?
小川:以前、ヤクルトでプレーしていたときには自分のことに一生懸命で、チームリーダーとしての意識はなかったと思います。でも、36歳となった今、彼はリーダーとして振る舞うようになりました。それは開幕前の時点ですでに発揮されていましたから。
――それは、具体的には?
小川:3月7日、宮崎アイビースタジアムで行われた中日とのオープン戦。序盤に点を取られて、0対7と7点のリードを許しました。対外試合が始まる前に、僕は全選手を前に「昨年の96敗がある以上、たとえオープン戦であろうとも、今年は勝ちにこだわってやっていく」と宣言しました。とは言え、序盤で7点もリードされると、多少の戦意喪失はあるものです。でも、このとき青木が自ら試合中にみんなを集めて、「シーズンではこういうケースも当然あるんだから、最後まで諦めたらダメだよ」と強く言いました。その姿を見て、チームリーダーとしての自覚を感じましたね。
全体の底上げに手応えアリ
――さて、今年もいよいよペナントレースがスタートしました。ここまでの手応えを教えていただけますか?
小川:昨年はレギュラー選手が故障した後の穴を埋めるべき控え選手の層が薄かったことが現実としてありました。だから、今年の春のキャンプでは体力強化と、一人一人のレベルアップを目標に掲げていました。そういう意味では、「レギュラーと控え選手の差が縮まったな」とか、「全体の底上げがなされたな」という手応えを感じていますね。
――具体的には誰でしょうか?
小川:鵜久森淳志、荒木貴裕、西浦直亨、山﨑晃大朗ですかね。他に、藤井亮太もいるし、奥村展征もいるし……、いずれにしても全体の底上げはなされていると思いますね。