
(写真:Ushico / PIXTA)
高齢化社会の日本で介護のニーズは高まるばかりだが、人手や財源は不足している。本特集では住む場所や経済力、どんな施設を選ぶかによって生まれる「介護格差」に迫る。
今や、家族の介護を担う人の4割が仕事を持つ「ワーキングケアラー」だ。管理職など責任の重い仕事を任されている人も多く、両立ができずに離職する人が毎年10万人前後いる。
経済産業省は、ワーキングケアラーの増加に伴う労働生産性の低下や離職などによる経済損失は、2030年時点で9.1兆円になると試算している。ワーキングケアラーはどこにつまずき、どんな教訓を得たのか。3人の経験者に聞いた。
出産前に母親が認知症に
「お母さんが何かおかしい」。PR会社の社長、森下麻由美さん(40代)の元に実家の父親(80代)から連絡が入ったのは、21年の暮れのことだった。
いつも服装に気を使う母親(80代)が、葬式に真っ赤な服で出席しようとする。冷蔵庫の中の物を腐らせ、薬の飲み忘れも増えた。気分の上下も激しい。
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