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〈拡大版〉在宅診療医が語るホスピス住宅の実態。医療法人社団悠翔会 佐々木淳理事長インタビュー

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佐々木 淳(ささき・じゅん)/医療法人社団悠翔会 理事長・医師。1998年筑波大学卒業。東京大学医学部附属病院消化器内科等を経て、2006年に最初の在宅療養支援診療所を開設。08年に法人化

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高齢化社会の日本で介護のニーズは高まるばかりだが、人手や財源は不足している。本特集では住む場所や経済力、どんな施設を選ぶかによって生まれる「介護格差」に迫る。
末期がんや難病の高齢者が入居する「ホスピス住宅」の一部で、不正が蔓延している。
ホスピス住宅の利用者は、施設に併設する訪問介護や訪問看護の事業者からサービスを受ける。病院から退院した後、自宅で暮らすことが難しい人の受け皿として、全国で拡大してきた。
ところが2月には、パーキンソン病患者に特化したホスピス住宅を運営するサンウェルズが特別調査委員会による調査報告書を公表。28億円超の診療報酬を不正に請求していたことが明らかになった。さらに3月、最大手のアンビスホールディングスでも同様の不正があったと共同通信が報じた。
手厚い看取りの場が、なぜ不正の温床になってしまったのか。在宅診療医で、ホスピス住宅を利用する患者の主治医も務める佐々木淳医師に聞いた。
※ホスピス住宅に関する情報を募集しています >>情報提供フォームはこちら

「そんなものだろう」と驚きない

――ホスピス住宅大手で、不正に高額な診療報酬を請求する行為が蔓延しています。

「そんなものだろう」と驚きはない。ホスピス住宅は“儲かる”という点に注目が集まり、急速に広がってきた業態だからだ。

医療や介護の仕事はまじめにやっていては儲からない。病院の半数は赤字だし、経営難の介護事業者も多い。もちろん経営が未熟で利益を出せていないという側面はあるだろう。だが、たとえばホスピス住宅最大手のアンビスホールディングスの営業利益率は約25%だ。異常なまでに高い。

なぜここまで収益性が高いのか。

1つは、入居する患者を病気の種類によって選別しているからだ。ホスピス住宅の施設類型は「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」だが、末期がんやパーキンソン病などの難病患者に絞って受け入れており、普通の高齢者は基本的に入れない。

ここがポイントとなる。要介護者が訪問看護を使う場合は通常、要介護度によって変わる介護保険の利用上限額がある。訪問看護は1回あたりの点数が高いため、ヘルパーさんに来てもらう訪問介護も併用しているような利用者は、そう何回も訪問看護を入れられない。

ところが、末期がんや難病という条件がつくと介護保険ではなく医療保険で訪問看護を提供できるようになる。しかも、利用量の上限も取り払われる。必要があれば、毎日、1日3回まで診療報酬を請求することが可能だ。

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