
「金融とIT、そしてメディアを一体化させるビジネスの構想を打ち出したタイミングで、奇しくもフジテレビの問題が出てきた。第三者委員会の調査報告を見て、このままではフジテレビがガタガタになってしまうと感じた。そうしたところにダルトンから話があり、お引き受けすることを決意した」
4月17日、都内で開いた記者会見でこう訴えたのは、SBIホールディングス(HD)の北尾吉孝会長兼社長だ。元タレントによる性加害問題に端を発したフジテレビ問題に新たな役者が加わった。
会見前日の16日。アクティビスト(物言う株主)として知られるアメリカの投資ファンド、ダルトン・インベストメンツは、フジテレビジョンを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(HD)に対して株主提案書を送付した。
ダルトンは今年6月に開催される予定の定時株主総会で、12人の社外取締役候補を取締役選任議案として諮るよう提案。12人の筆頭には北尾氏の名前を挙げていた。
「堀江さんに任せていれば」と北尾氏
北尾氏は2005年、堀江貴文氏の率いたライブドアがニッポン放送に買収を仕掛けた際、フジテレビ側に立ちホワイトナイト(白馬の騎士)を買って出た。SBIがソフトバンク系列の金融関連企業、ソフトバンク・インベストメントだった時代だ。
当時のフジテレビ(現フジ・メディアHD)の筆頭株主はニッポン放送。ライブドアはニッポン放送を買収することでフジテレビまでのみ込もうとしたが、北尾氏の登場もあってライブドアを制止することができた。

それから20年。北尾氏は会見で「あのときの判断は珍しく間違っていた。堀江さんに任せていれば、こんなことにはならなかっただろう」と反省の弁を述べた。
ホワイトナイトとして救った結果、日枝久・取締役相談役が約40年もの間、グループの実質的な代表として権力をほしいままにした。企業価値の実体は不動産という状況になったうえ、コンプライアンス意識が著しく欠如した企業風土を醸成した――。北尾氏はそういう考えに至った。
「20年の時を経て、環境は大きく変わった。堀江さんとも和解したし、本格的に動き始めるときだと決意した」。取締役候補になってくれとの要請を引き受けた理由について北尾氏は説明した。
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