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ispaceのCFOが語る「月面着陸」の事業性、宇宙ビジネスのリスクマネジメントと3つの競争軸

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月面着陸を含めて宇宙ビジネスは失敗がつきものの段階。CFOとして財務リスクのマネジメントの能力が問われる(写真:梅谷秀司)
6月6日に、「ミッション2」のプロジェクトで月面着陸を予定する宇宙ベンチャーのispace(アイスペース)。失敗に終わった2023年4月の「1」から満を持しての再挑戦となる。ただ、難易度は高いだけに成功できるかはわからない。(「ispace・月面着陸への「再挑戦」成否が持つ意味」)。財務・経営を両面から支えるCFO(最高財務責任者)の野﨑順平氏に、リスクに関する考え方や今後の競争のポイントを聞いた。

返済義務のない契約の背景

――収入の中心であるペイロード(荷物)の契約は、大半は失敗しても返金義務がないものになっています。リスクマネジメントとしては有効ではありますが、なぜ顧客はそれでも契約を結ぶのでしょうか。

宇宙の業界は実績がものすごく効く世界だ。顧客側のインセンティブの1つとしては、着陸が成功した暁にはアーリームーバーとしての非常に大きなアドバンス、先行メリットを得られるチャンス、可能性があること。民間企業であれば、実際に宇宙で世界初の実験を何かしたという実績を得られる。

もう1つ、仮に着陸に失敗してペイロードが宇宙の塵と消えてしまった場合でも、われわれから何も価値を提供できていないわけではない。契約から打ち上げまでの1年なり2年なりの間に、かなりの技術ナレッジ(知識や情報)を顧客にシェアしているからだ。

――技術ナレッジとは具体的にどういったものですか。

単に「月への宅配便として荷物は載せますが、ペイロードは自分で準備してください」という形でやっているのではなくて、われわれがコンサルテーションに入りながら準備をやっている。

地球上と同じような環境の想定では当然ダメなので、例えば振動や温度の変化、放射線に耐えられるか、といったところにしっかり対応していかないといけない。これは1回経験すると、間違いなく顧客にとってもナレッジとなる

また、打ち上げから着陸挑戦まで4、5カ月ほど宇宙空間を航行している。この期間中の温度や放射線変化による影響のデータも顧客に提供できる。これはまさに次のペイロードを開発するうえで貴重なデータになる。なので、着陸に失敗しても顧客が得るものがゼロというわけではない。

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