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200億円で買収された後に300億円の資金が流出、「船井電機」にトドメを刺したミュゼ買収の舞台裏

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窓越しから見た食堂で並ぶ社員たちの後ろ姿
船井電機本社の食堂の窓越しには、会社側の説明を聞く従業員たちの姿が見られた(撮影:東京商工リサーチ)

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2024年10月24日、信用調査会社の東京商工リサーチの調査員は、大阪府大東市の船井電機本社前にいた。「船井の様子がおかしい」との一報情報が入ってきたからだ。

ところがこの日は休みでもないのに人影もなく、静まりかえっていた。「何かおかしい」。調査員が、敷地周囲を回りながら社屋の様子をカメラに収めていたところ、ある異変に気づく。最上階にある食堂の窓越しに従業員たちの後ろ姿がずらりと並んでいたのだ。

実はこのとき、緊急の社員説明会が開催され、本社勤務の全従業員が食堂に集められていた。その席で突然、会社側の弁護士から破産することを告げられ、一斉解雇が通告されていたのだ。

従業員たちも業績の悪化は感じていた。しかし突然の解雇は寝耳に水だった。いったい何があったのか。従業員たちはあぜんとするばかりだったという。

ミュゼの買収で暗転

ミシンの卸問屋を前身として1961年に設立された船井電機。80年代にはブラウン管のテレビとビデオデッキが一体となった「テレビデオ」で一躍世界的な人気を獲得。その後も液晶テレビの生産に乗り出し、「世界のFUNAI」ブランドを確立した。

しかし2010年代以降、中国や台湾のメーカーとの価格競争が激しさを増し経営が悪化。2017年には創業者で精神的な支柱であった船井哲良氏が死去し、さらなる苦境に陥ってしまう。この年、ヤマダ電機と協業も開始したが、事態は好転しなかった。

そんな船井に目をつけたのが、出版社の秀和システムだった。当時の資料によれば、創業者の長男で筆頭株主だった船井哲雄氏が顧問を務めていた板東浩二氏に相談をしたところ、秀和の代表取締役であった上田智一氏を紹介されたという。事業の拡大を目指していた上田氏にとっても、この話は渡りに船だった。

そこで上田氏は2021年に船井電機の定期預金を担保としてりそな銀行から180億円を借り入れ、LBO(レバレッジドバイアウト)の手法を使って船井電機を買収する。これを機に船井電機は、上田氏を代表とする新経営体制に移行、2023年3月には船井電機を分割し、ホールディングス(HD)化した。

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