「脱毛サロン大手ミュゼ」で全役員が突然解任の怪 書面一枚でクビ通告の社長は「クーデター」を主張
2024年10月の船井電機の破産申し立てを機に、世間の目にさらされている脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」の経営。何が今起きているのか。

2025年2月10日。東京港区の台場にある脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」の運営会社本社は、物々しい雰囲気に包まれていた。
入り口には腕章をつけた複数の男性社員が立ちはだかり、中に入ろうとする人たちをシャットアウト。「中に入れろ」「いや、入れることはできない」といった押し問答が繰り広げられた。あげくの果てに社内にあった金庫を持ち出そうとする社員まで現れ、ついには警察官が呼ばれる事態にまで発展したのだ。
ミュゼを運営する「MPH」の本社に押しかけていたのは、それまでMPHの社長を務めていた三原孔明氏とその関係者数名。三原氏によれば、この日、MPHの株式を譲渡担保権の実行によって取得したとする合同会社トラストという会社から、「経営体制及び今後の運営に関するご連絡」というタイトルのFAXが送られてきていたことを知ったという。
書面の内容は、3日前の2月7日に株主総会が開かれ、三原氏を含む取締役全員が解任され、トラストの職務執行者である阿部博氏なる人物がミュゼの代表取締役に就任したというものだった。「旧取締役及び以前貴社の株主であった者らの一部又は全部による不正が疑われており」とも記されており、調査によってそれらを明らかにする考えが述べられていた。
まさに寝耳に水だった三原氏は、慌てて本社に向かったという。ところが入室に必要なカードキーの権限が解除されており、中に入ることができなかった。
社長の名前を答えられない
「事前には何も聞かされておらず、これはクーデターだと思った。このままでは、金庫に保管されていた実印を使って、さまざまな書類を勝手に作られてしまう」。そう考えた三原氏は、「社内にいた仲間に頼んで金庫を外に持ち出そうとしたところ、警察を呼ばれてしまった」と明かす。
証言どおり、取締役である三原氏のあずかり知らないところで株主総会が開かれ、しかも解任されたとなれば、まさに異常事態だ。
結局、この日は三原氏たちが折れて引き上げたものの、すぐさま顧問弁護士を通じて反論書を送付。「株式の譲渡承認や株主名簿の名義書換などが完了していないためトラストは株主としての権利を行使することはできず、(三原氏らを解任した)株主総会は有効性がない」と主張した。
しかし4日後の2月14日、従業員に対して全取締役の解任と阿部氏の社長就任、そして会長を務めていた大島正人氏が筆頭株主になったことが通知されたという。
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