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〈10銘柄の取引手法〉SMBC日興の相場操縦事件で被告は「普通の取引」、検察は「安定操作取引」と真っ向から対立

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日本取引所グループ
東京証券取引所などを傘下に持つ日本取引所グループの中で、市場の公正性・信頼性を確保するための「自主規制」を行う組織が日本取引所自主規制法人だ(写真:AP/アフロ)

特集「SMBC日興『相場操縦事件』の終着点」の他の記事を読む

「私がもし有罪であるならば、市場で日常無数に行われている取引手法に違法性があると疑われる可能性があり、多くの投資家は怖くて日本の市場で取引ができなくなります。賢明な判断をお願いします」――。

3月27日午後、東京地方裁判所の104号法廷。SMBC日興証券でエクイティ部の部長だった山田誠氏は、「無罪だと強く信じている」と述べたうえで裁判官にこう訴えた。

この日は山田氏を含め、違法な相場操縦に関わったとして起訴された5人の被告が最終意見陳述を行った。山田氏は検察側が主犯と位置づけている人物だ。

SMBC日興による相場操縦事件では、これまでほとんど立件されたことのない「安定操作取引」が事件の焦点となっている。具体的にどのような売買が違法な安定操作に当たるのかの蓄積がほぼなく、公判でもこの部分の議論に多くの時間が費やされてきた。

取引を分析した証人が指摘「3つの手法」

検察側は日頃からマーケットの監視を行っている日本取引所自主規制法人の分析を基に、一連の取引は違法な安定操作取引に該当すると主張する。弁護側はすべての取引について株価を安定させる効果がなく、安定させる目的もなかったため、違法ではないとしている。

長期にわたる裁判の過程で明らかになったのは、「大手証券の相場操縦」として強烈な批判にさらされたSMBC日興による取引が、金融商品取引法の専門家でも相場操縦に当たるかどうかの判断が難しいものだったということだ。

問題になっている10銘柄の売買とはどのようなものだったのか。証券取引等監視委員会(SESC)から依頼を受け、10銘柄の取引について分析した日本取引所自主規制法人のT証人は、SMBC日興が行った売買の手法を3つに分類している。

取引の3つの手法

図に示したように最も多く用いられたのは手法①だ。午前中の売買が終わった後にブロックオファー取引がキャンセルされたジンズホールディングス(HD)以外のすべての銘柄で使われた。

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