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〈事件化の端緒〉監視委の目を引いたSMBC日興の「ジンズHD株買い注文の取り消し」、地検の”やる気”がSESCの刑事告発を左右

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証券取引等監視委員会による聴取が行われた東京中央区日本橋のビルの入り口。SMBC日興証券は本社機能を丸の内と日本橋に置いている(記者撮影)

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百貨店の「日本橋高島屋」新館が入居する東京都中央区のビル。2020年12月10日、証券取引等監視委員会(SESC)の検査官3人はこのビルの20階を訪れていた。

SMBC日興証券はSESCによる検査対応の事務局をこのビルに設置していた。検査官の訪問の目的は聞き取り調査で、聞き取りの主題は株式の大口取引を意味する「ブロックトレード」だった。

後に役職員5人が逮捕され、法人としてのSMBC日興に罰金7億円、追徴金44億円という重い判決が下された相場操縦事件。その幕開けは、意外にも静かなものだった。

というのも、聞き取りを行ったのは証券検査課の検査官だったからだ。証券検査課は証券会社等が法令を順守しているかどうかなど業務や財産の状況を確かめるための部署。この日のヒアリングは定期検査の延長だった。

当初は「ブロックオファー」に踏み込まず

SMBC日興が作成したメモによれば、検査官は「これまで外資を見ていたので、『リテール向けのブロック』はなかったので説明してほしい」とSMBC日興側に話しかけた。リテール(個人)向けのブロックとは、後に問題となる「ブロックオファー取引」のことだ。

ブロックオファー取引は、まとまった数量の株式を取引時間以外に相対で売買するブロックトレードの一種に当たる。両者の違いは最終的に誰が株を買うのかにある。ブロックトレードが主に大口投資家同士での売買なのに対し、ブロックオファー取引は最終的な買い手が個人投資家となる。

一通り説明を受けた検査官は、「ブロックオファーは契約書もあり、サウンディング(需要調査)の仕方も確立されているし、特定の投資家ではなく、全国各地のリテール顧客へ販売している」との認識を示した。

さらには「ブロックトレードをもう少し細かく伺いたいので、ブロックトレードの情報を出し方やサウンディングの仕方について教えてほしい(原文ママ)」とも話したことが、SMBC日興の社内メモに記録されている。

この時点ではまだSESCも手探りの段階だったのか、この日は後に刑事事件に発展するブロックオファー取引について詳しく尋ねることはなく、ブロックトレードについて後日議論することとなった。

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