SMBC日興「相場操縦事件」、早期決着方針の歪み 相次ぐ証言の撤回、元従業員による訴訟提起も
年末が差し迫った昨年12月27日。東京地方裁判所104号法廷は異様な雰囲気に包まれていた。被告人同士の共謀を裏付ける証言の重要な部分について、検察官と証人が押し問答を繰り広げたからだ。
検察官「調書によれば、トレボー被告が山田被告に『よくやった』と声をかけたと証言していますよね」
証人「記憶にありません」
検察官「録音・録画されていた取り調べでもあなた自身が同様の話をしていますよ」
証人「記憶にありません」
検察官「自身の裁判でもこの法廷でそう話したのではありませんか」
証人「記憶にありません」
法廷で争われているのは、SMBC日興証券で起きた相場操縦事件だ。小糸製作所など上場企業の株式10銘柄を対象に、2019年12月から2021年4月までの間に違法な株価操縦を行ったとして、法人としてのSMBC日興と元副社長ら幹部6人が起訴された。
証言を翻した有罪確定の元副本部長
このうちSMBC日興と元副本部長1人は法令違反を認め、2023年2月に有罪判決が確定した。だが、残り5人は起訴内容を否認。2023年5月の初公判以降、いまも裁判が続いている。
「記憶にありません」を連発していたのは、この元副本部長だ。この日は検察側の証人として証言台に立っていた。自身の裁判では起訴内容を争わず、おおむね検察側の主張に沿う証言を行っていた。
事件の舞台となったのは「ブロックオファー」取引という、証券取引所の外で行われる株式の売買だった。
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