SMBC日興「相場操縦事件」、早期決着方針の歪み 相次ぐ証言の撤回、元従業員による訴訟提起も
ブロックオファーを所管していたエクイティ・プロダクト・ソリューション部(EPS部、現在は改組)は、エクイティ部とも相談しながらSMBC日興の取り分となるディスカウント率などの計算を行い、売り手との契約書の作成なども担っていた。
ブロックオファー実施の当日も法人営業部門とEPS部は緊密に連携、株価や顧客の状況などを都度報告し合いながらブロックオファーの手続きを進めていた。
証言に立った現役社員は、証券取引等監視委員会による調査が始まった当初、上司でのちに起訴された山田誠・部長から受けていた買い付けの“指示”について、証言していなかった。部長をかばうためだったという。
だが、調査の途中で同僚が亡くなり、捜査当局から山田部長は「指示はしてない」と供述していると聞かされた。「自分の身を守らないと」と考え、山田部長の指示で株価の下落を食い止める目的で株を買ったという供述を始めたと明かした。
起訴されなかった従業員を懲戒解雇
2023年10月の公判では、事件に関わったEPS部の副部長が同年2月に懲戒解雇の処分を受けていたことが明らかになった。元副部長は解雇を不服として民事裁判を起こしている。
元副部長は検察側から共謀関係を指摘されたものの、起訴や逮捕はされておらず、刑事事件としての責任は認定されていない。にもかかわらず、会社側からは起訴された元副社長らと同等の最も重い処分を受けた。
ブロックオファーという会社が組織として行っていた事業について、従業員個人の責任を追及するという歪んだ構図になっている。
東洋経済が裁判資料を閲覧すると、SMBC日興は解雇の理由を次のように記していた。
「違法な安定操作取引に主体的・積極的に関与し、繰り返し行っていること、その行為がきわめて悪質であること、原告(元副部長)らの行為により被告(SMBC日興)が看過しえない多大な損害・損失を被るなど重大な結果が生じた」
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