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量子技術で欧州が手にする一発逆転のチャンス、AIと先端半導体で米中に水をあけられた欧州の起死回生はあるか

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(写真:Lukas/PIXTA)

欧州連合(EU)が軍事力と経済競争力の不足に直面していることは、今や明らかだ。これらの課題に対処するには、新たな軍事同盟と新たな経済優位性の構築が欠かせない。そこでカギとなってくるのが量子技術である。

人工知能(AI)が持つ、世界の力の均衡を動かす能力については、多くのことが語られている。だが、より静かに進行する量子革命も間違いなく、産業、サイバーセキュリティー、防衛戦略に同じくらい画期的な影響をもたらす。そしてEUは、AIと先進半導体では米中に大きく水をあけられているものの、量子技術ではまだ先頭に立てる可能性を有している。

量子コンピューターはまったく新しい情報処理システムだ。二進法(0と1)で動作する古典コンピューターとは違い、一度に複数の状態を保持できる量子ビットを使用する量子コンピューターは、込み入った複数の計算を順番にではなく、同時並行で処理できる。

チェコ・プラハに本拠を置く国際的NPO「プロジェクト・シンジケート」は多くの有力者の論評・分析を配信しています。「グローバルアイ」では、主に同シンジケートのコラムの中から厳選して翻訳・配信しています。

超高性能の量子コンピューターは不安定でエラーを起こす確率が高いため熟成にはまだかなりの時間を要するが、それ以外の量子技術にはすでに実用化されているものもある。例えば量子センサーは、その圧倒的な精度によって軍事作戦や核抑止の形を変えつつある。量子暗号を使った通信も、重要インフラや知的財産に対するサイバー攻撃の深度と頻度が増す中で防衛策として導入が進んでいる。

つまり量子技術を開発すれば、欧州は防衛力のテコ入れが可能となる。経済競争力の観点でも、量子技術はバッテリー設計のシミュレーションに革新をもたらし、不調が続く欧州の自動車産業を復活させる可能性を秘めている。新薬候補物質の発見の加速などを通じて、強力な欧州の医薬品産業を一段と強くする効果も見込まれる。

欧州に「貴重な勝ち目」

量子技術の競争に欧州が有利なポジションで参戦できるのは幸いだ。オランダのキューテックやドイツのユーリッヒ研究センターなど、欧州には世界で戦える研究機関がある。欧州はほかのどの地域よりも多くの量子エンジニアを育てているし、量子技術の世界的な企業のおよそ4社に1社は欧州が拠点だ。

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