マリオ・ドラギ(欧州中央銀行〈ECB〉前総裁でイタリアの前首相)が欧州の競争力について発表した長文の報告書は、明らかに欧州連合(EU)の政策担当者の目を引くことを意図したものだ。欧州は米国に一段と劣後するようになっている、とドラギは強い言葉で警告した。デジタル革命に出遅れ、人工知能(AI)革命にも乗り遅れた欧州には、米国のアップルやマイクロソフトなどと肩を並べられる企業は1つもない。
さらに、生産性の伸びで米国に後れを取るEUは、進路を「抜本的に変え」なければ「存在理由を失う」とも述べている。警告としては極めて強いトーンだ。
だがドラギは反EUを掲げる欧州懐疑派などではない。勧告の大部分は、政策協調やEUレベルで公的投資を大幅に増やすといった「さらなる欧州」を求めるものとなっている。生産性の問題に対処し、経済のグリーン化を加速するには、8000億ユーロ(約130兆円)の追加投資が待ったなしで必要というのが、その主張だ。予想どおりこの提案は、パリでは慎重に受け入れられる一方、ベルリンでは抗議の雄たけびに遭っている。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら