【EUが国防費増でも潤うのは米国の防衛産業?】米国と分断深める欧州NATOの「揃わぬ足並み」。欧州にとって米国の背中はこれほど遠い

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防衛産業の地政学 これからの世界情勢を読み解くための必須教養
EUが国防費を増やしても潤うのはアメリカの防衛産業という構図ができ上がっている(写真:Sid10/PIXTA)
アメリカのトランプ政権と分断を深める欧州NATO。同盟各国の足並みをそろえたいところだが、各国の思惑が複雑に絡んで一枚岩とは言いがたい。国内外の防衛問題に詳しい防衛省防衛研究所主任研究官の小野圭司氏に、NATOの防衛産業の現状について解説してもらう。
※本稿は『防衛産業の地政学 これからの世界情勢を読み解くための必須教養』から一部抜粋・再構成したものです。

アメリカと欧州の経済力格差

冷戦の終結以降、アメリカと同様に欧州でも防衛産業の集約が進んだ。それでも規模ではアメリカにかなわない。

集約化の大きな流れに、欧州各国・各企業も抗うことは難しい。ところが欧州の各企業は、同じNATO加盟国とはいえ国境で細分化された国情とともにあった。したがって欧州の防衛産業には、アメリカの防衛産業とは異なる、風情とも呼ぶべきものが感じられる。

「NATO」と一括りで言っても、アメリカの存在は大きい。欧州NATOの国防支出を合計しても、アメリカの3分の1に満たない。これはそのまま、防衛産業の規模の格差に繫がる。

『防衛産業の地政学 これからの世界情勢を読み解くための必須教養』P.36より

表1‐5の大手防衛関連企業の売上高でも、欧州NATOの合計額はやはりアメリカの4割程度である。一方でアメリカは41社であるのに対して、欧州NATOは26社となっている。つまり平均すると、欧州の1社当たりの売り上げはアメリカの約6割だ。同じNATOといっても、欧州にとってアメリカの背中はこれ程遠いものとなっている。

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