【EUが国防費増でも潤うのは米国の防衛産業?】米国と分断深める欧州NATOの「揃わぬ足並み」。欧州にとって米国の背中はこれほど遠い
このように欧州では、航空機の国際共同開発が広がっている。艦艇でも開発協力が行われる場合もあるが、建造は防衛産業の作業量確保の観点から、調達国でそれぞれ別個に実施されている。
国際共同開発と「我田引水」
欧州において、特に開発費の高騰が著しい航空機では、国際共同開発の流れは変わることがないだろう。しかしこれも、完全な解決策ではない。問題として、以下の2つが挙げられる。
第1に、調整に時間がかかることだ。各国の軍隊は、それぞれに独自の運用構想を持っている。これは多分に、その国が置かれた地理的状況とも関わってくる。海に囲まれた英国と、大陸国であるフランスやドイツとでは、戦闘機や攻撃機の運用構想が異なることは容易に想像がつく。
このような国々が共同開発する場合には、仕様の擦り合わせが難航する。難航だけではなく、共同開発計画そのものが頓挫したり、合意に至らなかった国が計画から離脱することもある。前者の例では、英仏が検討していた可変翼軍用機開発計画(1967年計画中止)がある。後者ではトーネードの開発計画から1968年にカナダとベルキーが、1969年にオランダが離脱した。ユーロファイターでは計画進行中の1985年にフランスがラファールの独自開発に切り替えている。
さらに各国は自国の防衛産業への配慮から、時に牽強附会(けんきょうふかい)の姿勢をみせる。中でもフランスは、航空機を共同開発する場合には自国製エンジンの搭載を主張して譲らない場合が多い。アルファジェットはフランス製エンジンを装備し、ジャギュアのエンジンは英仏共同開発となった(※このエンジンは、後に日本(三菱重工)が開発したT‐2練習機・F‐1戦闘機にも搭載された)。フランスがユーロファイターの開発計画から離脱した理由の1つに、フランス製エンジンが採用されなかったことがある。
国際共同開発は要求性能・製造分担調整に時間を要する。これはそのまま開発費の高騰に繫がる。表3‐1に見る通り、国際共同開発の軍用機は単独開発に比べて、初飛行から運用開始まで1.5〜3倍の時間がかかっている。
もっともユーロファイターとラファールの関係は少し事情が異なる。
フランスはユーロファイター計画から離脱後に、ラファールの開発を進めた。両者を比べると、ユーロファイターは初飛行までの調整に時間がかかった。一方のラファールは、フランスが伝統的に苦手とするエンジンの開発がうまく進まず、初飛行ではアメリカゼネラル・エレクトリック製のエンジンを搭載していた。
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