欧州の産業競争政策は､もはや完全に時代遅れだ ｢競争力の羅針盤｣は問題だらけ

1月29日、欧州委員会が明らかにした今後4年間の産業政策を示したドキュメントは「EUのための競争力の羅針盤（A Competitiveness Compass for the EU）」と名付けられている（同委員会資料より）

私たちは激動の時代に生きている。ロシアはウクライナで侵略戦争を繰り広げ、アメリカと中国はエスカレートする貿易摩擦に巻き込まれ、ヨーロッパの産業は技術競争で遅れを取っている。

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ドナルド・トランプのホワイトハウス復帰は、気候変動対策を頓挫させ（パリ協定から米国を脱退させ、石油・ガス掘削を解禁するという彼の命令によって）、イスラエル・パレスチナ紛争をエスカレートさせ（ガザを一掃するという彼の提案によって）、ロシアとヨーロッパの極右を煽る可能性がある。

このような状況にあるにもかかわらず、昨年、新しい欧州議会が選出され、新しい欧州委員会が任命され、新たに定められたクリーン産業ディールや欧州競争力基金の計画は楽観的な見通しに満ちている。 1月29日、欧州委員会は、今後4年間の具体的な提案である「競争力の羅針盤」を発表。こうした野心的な目標の達成に向けた第一歩を踏み出した。

現実とのズレ

古風なイメージに頼ったタイトルが現実とのズレを象徴している。

1492年にクリストファー・コロンブスが大西洋を横断する際に役立った道具のひとつである羅針盤（コンパス）は、衛星ナビゲーションが発達した現代ではほとんど役立たない。さらに言えば、現在の地政学的な嵐を乗り切るための最も効果的な手段は、間違いなく常識であり、それが不足しているように思われる。