揺らぐ「核抑止」の神話、フランスの「核の傘」で欧州を守るのが"無理筋"でしかない理由

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フランスの「核の傘」による欧州防衛をぶち上げたマクロン大統領(中央)。だが、その実現には内憂外患が付きまとっている(写真:ブルームバーグ)

アメリカがウクライナ戦争に対するコスト削減をちらつかせる中、欧州は今、自らの防衛力を高める再軍備に舵を切っている。同時に、欧州連合(EU)で唯一の核保有国であるフランスの「核の傘」の下に入る議論が始まっている。

「欧州諸国がより大きな自立性と抑止力の実現を目指すのであれば、この非常に深い戦略的議論を開始する必要があるだろう」

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2月末にポルトガルを訪問した際、欧州規模の核抑止力に関する対話を支持すると初めて宣言し、国内外に衝撃を与えた。これは、ドイツ連邦議会選挙を前に、同国の次期首相と目されるキリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ代表が「アメリカは欧州の安全に興味がない」「フランスの『核の傘』の下に入ることも検討」と述べたことに呼応している。

欧州で加速する防衛力強化の動き

フランスの核抑止力を欧州に拡大するというマクロン大統領の考えは、アメリカに依存しない欧州独自の防衛体制を構築するというフランスの長年の主張が元になっている。

自立的防衛力の保有にこだわるフランスは1960年、シャルル・ド・ゴール大統領の下で最初の核実験を行った。以来、同国の核抑止力は完全に独立しており、国の重大な利益に対する脅威の評価は大統領に委ねられてきた。

フランスが現在保有する核弾頭は約300個。このうち「海洋型」と呼ばれるものは、戦略原子力海洋戦力(FOST)内にグループ化された4隻の原子力弾道ミサイル潜水艦に搭載されている。各艦は16発のミサイルを装備しており、各ミサイルには複数の核弾頭が搭載されている。

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