ベートーヴェンの交響曲第九番、いわゆる「第九」が1824年5月7日にウィーンで初演されてから、今年で200年を迎えた。200周年当日には初演の地ウィーンで、リカルド・ムーティ指揮によるウィーンフィルの第九記念コンサートが行われ、話題となった。
世界100カ国以上の現地在住日本人ライターたちの集まり「海外書き人クラブ」の会員である筆者が、第九のヨーロッパにおける位置づけとその背景を紹介する。
初演から今年で200年を迎えた楽曲
ベートーヴェンゆかりの地であるウィーン演劇博物館では、ユネスコ記憶遺産に登録されている第九の手稿が特別公開されるなど、現地では記念の年にふさわしい盛り上がりを見せた。
筆者が博物館を訪れた際も、ベートーヴェン本人が第九初稿に書き込んだメモなど、めったに見ることができない貴重な史料を、多くの音楽ファンが間近にのぞき込んでおり、その姿は印象的だった。
日本では年末の象徴とされる第九だが、ベートーヴェンが活躍した音楽の都ウィーンを含むヨーロッパの大部分では、第九は時期を選ばず演奏される。ヨーロッパ人が第九から最も強く連想するのは、年末の風物詩ではない。
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