今年5月29日から6月2日にかけて開催された、世界最大級のがんの国際学会、ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)の年次総会。がんの研究者や製薬会社の関係者ら約4.5万人が一堂に会し、がん治療の最新の知見が発表される。
会場に設けられた企業展示ブースで最も目立つ入り口付近に、とある日本企業が巨大ブースを構えていた。国内製薬3位の第一三共だ。スイスのノバルティス、米ジョンソン・エンド・ジョンソンといったメガファーマ(巨大製薬企業)とともに、学会の最上位スポンサーである「プラチナスポンサー」にも名を連ねる。
世界トップ5入りへ「強い自信がある」
並々ならぬ力の入れようには、理由がある。
第一三共といえば、10年前には国内市場を中心に、高血圧症薬、抗潰瘍剤、抗凝固剤といった慢性疾患薬を主に展開する企業だった。それが今、世界的な抗がん剤メーカーを目指し、事業構造を急速に入れ替えているのだ。2015年度時点では日本で約6割を稼いでいた売上高も、今や約7割を海外が占めている。
5月には、30年度までにがん領域だけで売上高2.3兆円、35年までに「世界トップ5」の抗がん剤メーカーを目指すと宣言した。世界的な抗がん剤メーカーを見渡すと、規模でリードしているのは「キイトルーダ」を展開する米メルクグループ、小野薬品と「オプジーボ」を手がける米ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMS)といったメガファーマだ。

第一三共のがん領域の25年度売上高は9500億円ほど。世界ランクでは、10位台後半といったところだろう。ここからあと10年でトップ集団へ食い込もうというのだから、大風呂敷のようにも見える。
だが、同社の研究開発本部長の阿部有生氏はこの見立てを冷静に否定する。「私なりに他社分析をした結果、恐れるような目標ではないという考えだ。今の研究開発を進めていけば、”通過点”として、トップ5はおのずと達成できると強い自信を持っている」(同)。
この自信の裏側に、どんな戦略があるのか。世界トップ5入りを狙う第一三共に足りないピースとは。次ページ以降で、“全振り戦略”の中身とその実現可能性を詳細に分析していく。
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