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「会社は暴力団のような犯罪組織ではない。検察官は会社においては役職員の間で仕事を分担し、相互に相手の仕事を信頼しながら仕事をしているという『組織体としての会社の基本構造』を看過している」――。
60回を迎えたSMBC日興証券の相場操縦に関する公判。3月27日の最終弁論では、5人の被告それぞれの弁護団から、検察側の論告に対する反論が述べられた。
中でも検察側の立証構造の問題点をもっとも痛烈に批判したのが元副社長の佐藤俊弘氏の弁護団だった。冒頭のとおり犯罪の成否だけではなく、検察が描いた事件の構図(ストーリー)そのものに誤りがあると指摘した。
売り手の大口株主に翻弄
今回の事件の舞台となったのは計10銘柄における「ブロックオファー取引」だった。
大口株主である「売り手」からSMBC日興が株式を買い取り、小口に分けて個人投資家に転売するという取引で、これ自体は違法な取引ではなかった。政策保有株を減らしたい法人株主や保有株式を手放したい創業オーナー社長などが利用していた。
ところが、取引前日に実施されていたSMBC日興による需要調査で情報を得た個人投資家などが、ネット証券など他の証券会社で開設した口座を使って対象銘柄をカラ売りし、当日の株価が大幅に下落するという問題が発生していた。
公判を通じて明らかになってきたのは、この大幅な株価の下落に関して、売り手である大口株主からのクレームに翻弄され続けたSMBC日興社内の実態だ。
後ほど詳しく見ていくが、アズワンやジンズホールディングス(HD)など、売り手が創業社長のケースでは、「主幹事なのだから」と株を買うように暗に求められたり、取引自体のキャンセルをほのめかされたりしていた。

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