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〈判決は7月22日〉ブロックオファー取引の問題は放置、禍根を残したSMBC日興の相場操縦事件

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SMBC日興証券の会見
2022年3月、相場操縦事件で役職員が逮捕・起訴されたことなどを受けてSMBC日興証券の経営陣は陳謝した。それから3年、事件の終着点はどこになるのか(撮影:尾形文繁)

特集「SMBC日興『相場操縦事件』の終着点」の他の記事を読む

2022年に金融商品取引法違反の相場操縦を問われて起訴されたSMBC日興証券の相場操縦事件。会社としては社長自らが出廷し罪を認めた一方、裁判が続く5人は全員が無罪を主張している。
東京地方裁判所での公判は3月27日に結審し、7月22日に判決が言い渡される。約3年にわたる裁判の傍聴記録と専門家、関係者への取材を踏まえて、事件の全貌を明らかにしてきた本特集の最後では、今も残る課題をみていく。
【配信記事の一覧】
3月19日 SMBC日興「相場操縦事件」は全被告が無罪主張貫く
3月19日 SMBC日興の事件は「自己売買の目的」が最大争点
4月14日 SMBC日興「相場操縦」の背景に売り手の強烈な圧力
4月17日 SMBC日興「相場操縦事件」10銘柄の取引手法の詳細
5月7日  「ジンズ株取引」がSMBC日興相場操縦事件化の端緒

「刑事事件化したことで、『日興だけが悪い』と議論が矮小化され、ブロックオファー取引そのものの問題にメスが入らなかった」――。当局サイドでSMBC日興証券の相場操縦事件に関わったある関係者はそう振り返る。

ブロックオファー取引は、大口株主である「売り手」からSMBC日興が株式を買い取り、小口に分けて「買い手」となる個人投資家に転売するという取引だ。政策保有株を減らしたい法人株主や保有株式を手放したい創業オーナー社長などが利用していた。

関係者が口にした「取引そのものの問題点」とは何か。それは潜在的にカラ売りを誘発し、自然な株価形成を歪める取引であるということだ。

取引の仕組み自体がカラ売り前提

ブロックオファー自体は違法な取引ではなく、類似の取引はSMBC日興以外の証券会社でも行われていた。それら類似の取引においても、対象銘柄はカラ売りされており、株価が不自然に下落する事態が発生している。

類似の取引を行っている各証券会社は、取引実施前に自社の限られた顧客に対して株式の売却が行われることを伝達する。あるネット証券の幹部は「この取引の仕組み自体がカラ売りを前提としており、不健全だ」という。

SMBC日興のブロックオファー取引や大手証券の類似取引では、買い手の「ディスカウント率」が相対的に低く設定されている。最終的な買い手である個人投資家は、SMBC日興のケースだと取引当日の終値に対して0.5%のディスカウント率で株式を買っていた。

これは大口の株式売却があることを公開し株式の購入を募る「立会外分売」と比べて、かなり低いディスカウント率だという。立会外分売のディスカウント率は、3~5%に設定されていることが多い。なお立会外分売も法人株主やオーナー経営者などが保有株を放出する際に用いられる。

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