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「刑事事件化したことで、『日興だけが悪い』と議論が矮小化され、ブロックオファー取引そのものの問題にメスが入らなかった」――。当局サイドでSMBC日興証券の相場操縦事件に関わったある関係者はそう振り返る。
ブロックオファー取引は、大口株主である「売り手」からSMBC日興が株式を買い取り、小口に分けて「買い手」となる個人投資家に転売するという取引だ。政策保有株を減らしたい法人株主や保有株式を手放したい創業オーナー社長などが利用していた。
関係者が口にした「取引そのものの問題点」とは何か。それは潜在的にカラ売りを誘発し、自然な株価形成を歪める取引であるということだ。
取引の仕組み自体がカラ売り前提
ブロックオファー自体は違法な取引ではなく、類似の取引はSMBC日興以外の証券会社でも行われていた。それら類似の取引においても、対象銘柄はカラ売りされており、株価が不自然に下落する事態が発生している。
類似の取引を行っている各証券会社は、取引実施前に自社の限られた顧客に対して株式の売却が行われることを伝達する。あるネット証券の幹部は「この取引の仕組み自体がカラ売りを前提としており、不健全だ」という。
SMBC日興のブロックオファー取引や大手証券の類似取引では、買い手の「ディスカウント率」が相対的に低く設定されている。最終的な買い手である個人投資家は、SMBC日興のケースだと取引当日の終値に対して0.5%のディスカウント率で株式を買っていた。
これは大口の株式売却があることを公開し株式の購入を募る「立会外分売」と比べて、かなり低いディスカウント率だという。立会外分売のディスカウント率は、3~5%に設定されていることが多い。なお立会外分売も法人株主やオーナー経営者などが保有株を放出する際に用いられる。
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