手法①で使われた「引け執行条件付きの注文」とは、発注後すぐに成立する可能性がある普通の注文とは違い、午前と午後の取引終了時刻にのみ有効となる注文のことだ。東京証券取引所の取引時間延長で現在の取引終了時刻は午後3時半だが、事件当時は午後3時だった。
手法①には、ほかの2つの手法と比べて1回の発注規模が大きいという特徴がある。例えば、小糸製作所の株式のケースでは、引け指し値の買い注文は合計30万株もあった。手法③に分類されたザラバの指し値買い注文は合計2万株だった。
ジンズHDをのぞくすべての銘柄で行われており、売買の規模も大きいことから、手法①が安定操作取引に該当するかどうかが、検察側の立証の大きなポイントになっている。
終値への関与は「安定操作」か
小糸製作所の株式のブロックオファー取引が行われたのは2019年12月25日。大口株主であるデンソーが売り手で、SMBC日興が株式を買い取り、小口に分けて個人投資家に転売する取引だった。
SMBC日興は株式を買い取る際の価格を、当日の終値から数%値引きした値段にすると決めていた。そのため株価が下がりすぎてしまうと、売却益が少なくなることを嫌った大口株主からのクレームが発生したり、最悪の場合は取引自体をキャンセルされたりする可能性があった。
午後2時18分にSMBC日興が5200円の引け指し値注文を10万株発注した時の売り注文と買い注文の状況を図にした。T証人によれば、SMBC日興がこの注文を出したことにより、引け予想値段が4710円から4870円に引き上がっている。

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