〈インタビュー〉マネックス松本会長「東証の企業行動規範改正は少数株主にグレートニュースだ」

――MBO(経営陣が参加する買収)や親会社などの支配株主による完全子会社化には、「確信犯的に少数株主の利益を棄損しているケースが多い」と指摘してきました。どのような問題意識があったのですか。
MBOや支配株主による完全子会社化において、安すぎる価格で買収されるケースが散見される現状がまずあった。理由はいろいろあるのだろうが、取締役の株主に対する「フィデューシャリー・デューティー」(信認義務)が日本にない影響は大きいと考えている。
社内・社外に関係なく取締役は、すべての株主の利益を考えて行動しなければならないというフィデューシャリー・デューティーが、アメリカでは判例などを通じルールとして確立し機能している。
買収提案を受けた企業の取締役に対し、株主のために売却価格の最大化を図るよう求める「レブロン基準」もその1つ。大株主は少数株主の利益を侵害してはならないというルールもアメリカでは定着している。
少数株主が守られない市場はおかしい
――より多くの議決権を握った者勝ちというのが資本市場のルールなので、少数株主自身が「自分たちは不利益を受けても仕方ない」と考えてしまう傾向にありますね。
2019年にヤフー(現LINEヤフー)とアスクルの経営陣が対立した際、ヤフーは堂々と「多数決で決めるのが資本市場のルール」だというスタンスをとった。しかしこれは、アメリカ的な資本市場のルールとは完全に相容れない。
「少数株主の利益は無視します」と宣言したに等しかった。訴訟になったら勝てない。だが日本の多くの人は「資本市場って白黒がつく潔い場所なんだな」と思ったかもしれない。
このように根本的なところで理解が違っているので、それを直したいという思いがある。
――東証の「フォローアップ会議」において、MBOなどで「大変由々しき事態」が起きていると発言したのは2023年12月。議論の口火を切ったのは松本さんになるのでしょうか。
東証はPBR改革の次の目玉を何とすべきか。2年くらい前からこの問題に取り組むべきだと主張し始めたが、当初は他の委員の方たちだけでなく東証もなかなか乗ってくれなかった。グロース市場改革のほうを先にやりたいと。
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