有料会員限定

〈インタビュー〉マネックス松本会長「東証の企業行動規範改正は少数株主にグレートニュースだ」

✎ 1 ✎ 2
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
マネックスグループ松本会長
マネックスグループ会長の松本大氏は、「少数株主の利益が守られていない上場資本市場はやはりおかしい」と語る(撮影:梅谷秀司)

特集「もう許されない「少数株主」の軽視」の他の記事を読む

東京証券取引所が進めている「企業行動規範」の改正作業が大詰めを迎えている。『東証が検討「やりたい放題の買収」の是正ポイント』で報じたように今回の改正は、上場会社の既存株主が買収者によって強制的に保有株を買い取られてしまう「スクイーズアウト」の際、少数株主の利益が守られていない現状を改善する目的がある。
改正作業は、東証に助言する有識者の会議体「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」での議論が基になっている。メンバーはエコノミスト、学者、投資家などで総勢9人。PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に対応を迫った「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請も、同会議の助言によって実現した。
フォローアップ会議発足当初からメンバーに入っているのがマネックスグループ会長の松本大氏だ。かねて支配株主(議決権のある株式の過半数を保有する株主)と少数株主(支配株主以外の株主)の問題について発言してきた松本氏に話を聞いた。

――MBO(経営陣が参加する買収)や親会社などの支配株主による完全子会社化には、「確信犯的に少数株主の利益を棄損しているケースが多い」と指摘してきました。どのような問題意識があったのですか。

MBOや支配株主による完全子会社化において、安すぎる価格で買収されるケースが散見される現状がまずあった。理由はいろいろあるのだろうが、取締役の株主に対する「フィデューシャリー・デューティー」(信認義務)が日本にない影響は大きいと考えている。

社内・社外に関係なく取締役は、すべての株主の利益を考えて行動しなければならないというフィデューシャリー・デューティーが、アメリカでは判例などを通じルールとして確立し機能している。

買収提案を受けた企業の取締役に対し、株主のために売却価格の最大化を図るよう求める「レブロン基準」もその1つ。大株主は少数株主の利益を侵害してはならないというルールもアメリカでは定着している。

少数株主が守られない市場はおかしい

――より多くの議決権を握った者勝ちというのが資本市場のルールなので、少数株主自身が「自分たちは不利益を受けても仕方ない」と考えてしまう傾向にありますね。

2019年にヤフー(現LINEヤフー)とアスクルの経営陣が対立した際、ヤフーは堂々と「多数決で決めるのが資本市場のルール」だというスタンスをとった。しかしこれは、アメリカ的な資本市場のルールとは完全に相容れない。

「少数株主の利益は無視します」と宣言したに等しかった。訴訟になったら勝てない。だが日本の多くの人は「資本市場って白黒がつく潔い場所なんだな」と思ったかもしれない。

このように根本的なところで理解が違っているので、それを直したいという思いがある。

2019年のヤフーとアスクルの経営陣対立 アスクルの通販事業の譲渡をめぐって両社の関係が悪化。その後、アスクルの創業者社長と3人の独立社外取締役は、筆頭株主で約45%の議決権を持つヤフーと第2位株主のプラスが定時株主総会で取締役再任に反対したことにより解任された。一般株主の権利を代表する独立社外取締役の解任にまで踏み込んだことで親子上場の問題が再燃した。

――東証の「フォローアップ会議」において、MBOなどで「大変由々しき事態」が起きていると発言したのは2023年12月。議論の口火を切ったのは松本さんになるのでしょうか。

東証はPBR改革の次の目玉を何とすべきか。2年くらい前からこの問題に取り組むべきだと主張し始めたが、当初は他の委員の方たちだけでなく東証もなかなか乗ってくれなかった。グロース市場改革のほうを先にやりたいと。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD