これまた、オフィス死語である。2001年の中央省庁再編によって大蔵省は財務省と金融庁に変わった。そして大蔵大臣という名は、もはや会計ソフトでしか見られなくなった。過去のポストで、若手にしてみたら日本史に出てくる役職で、「勘定奉行」とそう変わらなそうだ。これも会計ソフトがあるからややこしいのだが。
ヒトは、若い頃に接して影響を受けたカルチャーを、生涯引きずって生きていくものだ。だから、カラオケなどに行くと、団塊ジュニア世代は「渋谷系歌合戦」や「BOØWY選曲縛り」をついつい始めてしまう。バイク乗りが50代に多いのも、彼らが若い頃にバイクブームがあったからだ。同じ現象が、オフィス死語でも見られる。
「ミーティング中、納得のいく意見が出てきたので『なるほど……“なるほどザ・ワールド“だな!』と愛川欽也ばりに力強く言ったのに、完全に無視されたことがあります」(金融・45歳)
「ちょっとしたミスをした社員に対して『おお。ゆうしゃよ。しんでしまうとはなさけない』と初代ドラクエのセリフをもじって冗談めかしてみたのですが、『すいません』とただ謝られるだけ。心の中でベホイミを唱えました」(広告・40歳)
ムリに迎合せず「古いですね」と対応
「部下の提案があまりに浅はかだったので『それはないね。ないない。“NAI・NAI16”』と口走ってしまいましたが、反応がゼロだったので『シブがき隊だよ! ふっくん、もっくん、やっくん!』と追い打ちをかけたのですが、なおダメでした」(出版・43歳)
「社の忘年会のビンゴ大会で数字が出るたび『お、8が出た! 原辰徳!』『15番。山倉かあ……』『お、4番。新田恵利!』などと口走っていたのですが、明らかに同世代しか反応がなかった」(サービス・45歳)
オフィス死語というより、「そりゃ若手社員にはわからないよ!」と突っ込まざるをえないノスタルジー用語の連続である。ネタなんじゃないかという気すらするが、実のところ、半分は自分の若かりし頃の思い出のネタを話したくてウズウズしている面もあるだろう。
若手社員が、こうした死語にムリして「そのへん、僕ら世代はギリギリ、わかるかわからないくらいですね」などと口走ると、「あ、ギリギリガールズ派? 俺はシェイプアップガールズ派」などと応酬され、面倒な昔話に誘い込まれるリスクがある。カジュアルに「古いですねえ」「原辰徳って、88番じゃなかったんですね」などと笑って返せば、ローリスク・ローリターンで済みそうだ。
かように、オフィス死語は、先輩社員の日常にひそかにしみ込んでいるものだ。
慌てず騒がず適当に渡り歩くために、適度にいじりつつ、適度にスルーする術を身に付けていただきたい。なるはやで(これもオフィス死語っぽい)。
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