むむ。さすがにポストはオフィス死語ではないのではないか。これは、相手の若手社員が知らなすぎのような気もする。
本来、言葉をよりわかりやすく伝えるために「比喩」や「修飾語」はある。にもかかわらず、オフィス死語の使い手たちは、むしろわかりにくくしたいのかな、と思えるような昔懐かしい比喩や修飾語を多用している。
「進捗の遅い部下に対して『そんなペースじゃドッグイヤーの時代を生き残れないよ!』と諭したのですが、まったくピンときてない顔をされました」(IT・38歳)
「ドッグイヤー」もオフィス死語になってきている。ITの世界では新技術品がスピーディに生まれ、進化して、消える。その拙速さを表現した言葉が「ドッグイヤー」だ。犬の1年が、人間でいうと7年分に相当するため、「犬の寿命並みに進化が進む」という比喩だ。ITが普及した2000年前後によく使われたが、今やさっぱり聞くことがなくなった。
オフィス言葉もドッグなイヤーで進んでいるのだ。いまだドッグイヤーと口走る先輩は「時の移り変わり実に早いのだよ」と身をもって諭してくれている優しい人だと考えよう。
先輩・上司は当時から使っている言葉を捨てられない
「うちの部署に入った新人と帰宅の電車が同じに。『週末なのに、直帰するの? せっかくの“花金“なのに』と声をかけたら、『ハナキン!? 本当に“花金”って言うんですね!』と珍しい動物でも見られるかのように指摘されました」(商社・47歳)
“花金”はジ・オフィス死語だろう。かつて企業も官公庁も、週休1日で、日曜日のみ休みというところがほとんどだった。しかし、80年代から土日休みの週休2日制を採る企業が増え、官公庁も1992年には週休2日を採りはじめた。そこで金曜夜の価値が急浮上。「翌日を気にせず、華々しく夜遊びできる曜日」として“花金”と呼ばれるようになったわけだ。ちょうどバブル景気の頃と重なり、週末の金曜日に遊ぶ会社員が増え、花金は一気にポピュラーな言葉になった。
もっとも、バブル終焉とともに、世の中に余裕もなくなり、“花金”の言葉も散ることに。これを使う先輩がいたら、きっとかつて花金を謳歌した人に違いない。「先輩たちの頃って、花金で、どんなお店で遊んでいたんですか?」「え、カフェ&バー? それってカフェなんですか、バーなんですか?」などと少し突っ込んでみるのもいいだろう。それにしても近い将来、“プレミアムフライデー“が同じ憂き目に遭いそうだ。
「若い同僚に『俺、小遣い少ないんだよ。うちの“大蔵大臣“が厳しいから』と当たり前のように話したのですが、これいま財務大臣ですよね」(44歳・広告)
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