一方、スペイン人のチームメートは、どんなにお腹をこわしても、嬉々としてやっている。国際開発というのは、自分のフィールドではないと痛感した1カ月でしたね」
自分の向き・不向きや、限界を知るのもまた、ビジネススクール教育の一環なのだ。
オープンイノベーションで“ゆるく考えよう”
2012年9月、藤原さんは、「イノベーション」に対する考え方を大きく変えてくれた授業に出合う。
世界的に有名なヘンリー・チェスブロウ教授の「Topics in Open Innovation」(オープンイノベーション概論)だ。UCバークレーが誇る人気授業で、エンジニアとして研究開発をしてきた藤原さんも心待ちにしていた。
オープンイノベーションとは、社内で開発した技術や知的財産を社外に開放することで、どんどん活用してもらい、市場を拡大することによって利益を得ましょう、という考え方だ。「権利」「特許」を囲い込むことで儲けるビジネスモデルとは、真逆だが、シリコンバレーでは新しい経営概念として注目されている。
チェスブロウ教授は、「オープンイノベーション」という概念を最初に提唱した人物として世界的に有名だ。ハードディスクの製造で知られるクアンタム社の関連会社で事業開発の責任者を務めた後、1997年にハーバード・ビジネススクール助教授に就任。2003年からUCバークレーのオープンイノベーションセンターのエグゼクティブディレクターを務めている。
2003年に出版した著書は世界的なベストセラーとなり、日本でも『OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて』(産能大出版部)として出版されている。最新刊『オープン・サービス・イノベーション 生活者視点から、成長と競争力のあるビジネスを創造する』(阪急コミュニケーションズ)も、新聞の書評などで取り上げられ、話題となっている。
日本とのかかわりも深く、2003年には、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトにも協力している。
授業は、毎回、ゲストスピーカーが講演をし、それを基にチェスブロウ教授がディスカッションを進めていく方式だ。シスコ、グーグル、デュポンなどのオープンイノベーション担当者が来校し、具体的な事例を語る。
たとえば、「210年にわたって、オープンイノベーションを実践している」というデュポン社の担当者は、その歴史と、それがいかに企業の成長に寄与したかを語った。
藤原さんは、「『最初に発明したり開発したりした人』『独占した技術』が儲けられる時代は終わったのだ」と痛感する。イノベーションは、技術革新だけではなく、顧客中心の発想からビジネスモデルを革新することを意味する。
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