「終身雇用って、普通は成り立たないでしょう?」
「日本企業は、社員を簡単に解雇できないの?」
「年功序列って、成果をどうやって評価するの?」
丁寧に質問に答えるうちに、清水さんは、日本の常識がいかに世界では常識でないかを実感する。
「日本で常識だと思われていることを、一から問い直すようになりましたね。ほかのビジネススクールでは、期末試験で日本の企業が大々的に取り上げられることはないでしょうから、幸運な経験ができました」
LGBTの男性から学んだ、新しい価値観
「彼に出会わなかったら、卒業後の進路は、まったく違っていたものになっていたでしょうね」
清水さんがこう語る「彼」の名は、クリストファー・ピアソン・スミスさん(28歳)。ダートマス・タックで容姿端麗かつ頭が切れる男性として評判だ。ビバリーヒルズで育ち、大学はカリフォルニア大学ロサンゼルス校。大学卒業後、デロイトコンサルティングを経て、2011年、ダートマス・タックに入学した。
何もかも完璧に見える「彼」は、LGBTだ。LGBTとは、Lesbian, Gay, Bi-sexual, Transgenderの頭文字をとった略語で、アメリカで性的マイノリティを指す言葉として使われている。彼はこのうちのG=ゲイであることを公言している。2008年には、LGBTの地位向上を目指すNPO法人「イコール・ルーツ・コーリション」を立ち上げた。
クリスさんは、入学してすぐに、LGBTクラブに入部。率先してイベントを主催するなど、精力的に活動を始めた。
ダートマス・タックは、ダイバーシティを重んじ、学生の多様性を大切にする校風で知られる。1学年270人という小さなコミュニティで、寮やシェアハウスに住み、ほぼ24時間一緒に過ごす。大学の職員は、学生の家族やペットの名前まで覚えているという。
家族のように濃いコミュニティの中で、大切にされるのは、お互いを深く理解し合うこと。タックの学生は、マイノリティの人たちを尊重し、LGBTだけではなく、軍隊出身者、アフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人の地位向上を目指すクラブなどがある。
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