「精神的にも体力的にも、最も極限状態に置かれた体験でしたね。チームメートに、『できないならできないと、声を上げてほしい』と言われ、何でも全部1人で抱えず、『自らの限界を認めて、チームメートに仕事を割り振る』ことの重要さを身をもって学びました」
極限状態の5泊6日を共にした仲間とは、親友になった。
ダートマス・タックの学生は、家族のような絆で結ばれることで知られる。その絆は、入学前にサバイバル体験を共有することから始まるのかもしれない。
期末試験は“三井物産の危機管理”
ダートマス・タックでは、入学後、経営者としての必要なスキルの基礎を包括的に身に付ける集中講座を受けることが必修になっている。その代表的授業が「Analysis For General Managers」(経営者概論)だ。
経営者の視点で企業事例を読み取り、「自分が社長だったらどうするか」を議論する授業だ。ナイキやボディショップなどの大企業から中小企業まで、幅広い企業の事例を取り上げ、経営者に必要なスキルや視点、資質について学んでいく。
授業はタックの有名教授、ポール・アルジェンティ教授とシドニー・フィンケルシュタイン教授が共同で受け持つ。
アルジェンティ教授は、危機管理とコミュニケーション戦略に詳しく、『デジタル・リーダーシップ―ソーシャルメディア時代を生き残るコミュニケーション戦略』(日本経済新聞出版社)という著書を出版している。
フィンケルシュタイン教授は、企業の失敗事例の専門家。『名経営者が、なぜ失敗するのか』(日経BP社)という著書もある。
清水さんがこの授業を受講したのは2011年9月。9月末に実施された期末試験は、テスト形式。ひとつのケース(企業事例)を読み、自宅などに持ち帰り、3時間かけて課題に答える。
封筒を開けてみると、思いも寄らぬ企業の事例が入っていた。「三井物産」だ。この授業で日本企業が取り上げられたことはなく、周りの友人も一瞬、戸惑っているようだった。
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